社会
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日本国憲法が公布されてから70年がたった。巷では憲法論議もされているようだが、まだまだ十分とはいえない。各種世論調査を見ても、憲法改正の是非については拮抗している。しかし、この70年で憲法と現実の間にズレが出てきているのは間違いない。単なる9条論争でなく、発展的な改憲を考える必要があると筆者は考える。
その前に「憲法」とは何かについてもう一度国民的理解を共有する必要がある。憲法は誰が誰を縛るものか、それは国民が国家権力を縛るものだ。国家権力は個人の生命・財産を超越してなんでも自由できるほどの力を持っている。これを国民を守るために制限をかけるものが「憲法」だということを改めて記載しよう。そのため「最高法規」と呼ばれ、法律よりも強い効力をもつのだ。
さて、これからの憲法を考えるにあたって、大きく3つのポイントがあると考える。そのポイントについて、筆者の意見を簡単に述べてみたい。
(1)統治機構
憲法の本質から考えると、いかに権力を集中させずお互いに監視をさせるかという方向になる。しかし、日本国憲法は先の戦争の反省から過度に権力の行使を抑制しているのではないか。その中で、5年前の東日本大震災、今回の熊本地震などでの対応の経験から「緊急事態条項 」を加えるかどうかの議論がでている。海外でも昨年11月のパリ同時多発テロの際も議論されている。しかし、この条項は、かつてナチス政権を生み出した全権委任法につながるという懸念が常に絶えないものである。
筆者としては明治憲法、日本国憲法を通じての問題として、総理大臣の権限の小ささが問題ではないかと考えている。実は総理大臣は直接各省庁に指示をだせない(担当大臣を通じて)、また内閣の決定は閣議を通じてでないとできないのだ。大臣の任免権を通じて内閣を運営することになっている(明治憲法下では任免権もなかった)。緊急時には総理大臣がリーダーシップを発揮できるような制度を組み入れていく必要があるのではないだろうか。
また現在の二院制をどうしていくかについても考える必要がある。ここ10年を見てみると、衆参のねじれがあると法案成立や国会同意人事が進まず、政治が停滞するといってよい。政治の推進を考えると一院制の移行を真剣で考えるか、いままでの歴史を踏まえるなら参議院の役割を変えていかなければならないだろう。
そして、国と地方の関係については、憲法の中でより具体的に規定する必要がある。地方分権・地方創生という観点を取り込んで、地方政府を規定し、立法権や財政自主権について権限付与を行うべきではないか。
(2)安全保障
安保法制における集団的自衛権の行使が憲法上認めらるかどうか議論が記憶に新しい。平和を維持するということは不断の努力が強いられると考える。周辺環境が変化している以上、過去の延長に未来があるのではなく、それに対応した打ち手を講じる必要がある。ただ憲法という観点では、国民的合意のレベルで一歩一歩進んでいく必要があるので、日本国は自衛権を保有しており、その自衛のための戦力としての自衛隊を存在するということを明記することは行われかければならないと思う。
(3)「個人の尊重」と「公共の福祉」の範囲
憲法13条には「すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。」とあり、個人としての尊重は公共の福祉の範囲内で認められるように書かれているが、実際のところほぼ制限なく個は優先されているといってよい。公共の福祉を法制化されたものとして土地収用法があるが、これも執行にいたるにはかなり抑制的に行われている。「公共の福祉」を社会秩序まで拡大すると人権を抑圧することになるが、この範囲をどこまで社会にとって必要かということはきちんと意識していかなければいけないと考えている。
一方、改憲論議の中でプライバシー権や環境権など新しい権利の制定についての意見も出ているが、これは13条を基礎に時代に合わせて法制化するということで良いのではないかと考える。それほど、13条は重要で意味のある条文だ。
以上、筆者なりに改憲論議の中で考えるべきポイントを解説したが、一番大事なことは憲法に対して国民が常に関心を持ち続けることで、そのために憲法記念日があると思う。
河戸 侑民
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