トップページ ≫ 外交評論家 加瀬英明 論集 ≫ アメリカの対外姿勢を決定する独特の思い込み
外交評論家 加瀬英明 論集
アメリカ人は、攻撃的だ。この性癖も、開拓時代からきている。
アメリカ人は、暴力を好んでいる。アメリカには、「暴力とチェリーパイは、アメリカの大好物だ」という、誰でも知っている言葉がある。チェリーパイは、アメリカのシンボルの一つだ。アメリカ人は、甘いチェリーパイに、眼がない。
「エクセプショナリズム」は、アメリカ人がアメリカを表わすのに当たって、もっとも好んでいる言葉だ。
エクセプトは例外を意味し、エクセプショナルは優れたものを指すが、アメリカが世界に他にまったく類例のない、建国以来、抜きん出た国であり、理想の国であることを、意味している。
アメリカが道徳的にどの国よりも、優越していると、信じている。「丘の上の光輝く都市」であるのだ。
アメリカが、世界で殺人をはじめとする、犯罪率がもっとも高く、さまざまな不正や、非行が横行している国であるのに、道徳の規範となるべき国だと、思い込んでいる。
ところが、与党の民主党は2014年の中間選挙と、二年後の決戦となる2016年の大統領選挙へ向けて、「女性を守る戦い」を、公約の中心として、掲げている。
その内容は、DV(家庭内暴力)や、キャンパス・レイプ―大学のキャンパスにおける男子学生による性暴力を、一掃することによって、女性の権利を護るというものだ。
アメリカでは2012年に、殺人事件が人口10万人当たり4.7件発生したが、カナダをとれば、10万人当たり1.6件、西ヨーロッパでは1件だった。
どうして、このような国が、世界に対して道徳の規範となることが、できるのだろうか。
ヨーロッパ諸国も、昔は旧教であれ、新教によってであれ、偏狭なキリスト教の信仰によって、縛られていたものだった。
それなのに、どうしてアメリカだけが、今日になっても、キリスト教の信仰から発する情熱を、燃やし続けているのだろうか?
アメリカ国民は、自分たちが誰よりも正しいと、固く信じて、高い誇りをいだいている。その生い立ちから、押しつけがましい国民なのだ。
アメリカは、他国からどう思われようと、よりよい世界をつくる使命があると、信じている。
今日でも、清教徒たちが東海岸に到着して以来、理想の国を築く使命を授けられてきたという、神話が生きている。
このような思いこみが、アメリカの世界に対する姿勢と、対外政策を形成している。
どうして、アメリカがこのような思い込みによって動かされてきたのか。この疑問に答えるためには、十四世紀に始まったルネサンスと、そのすぐあとに到来した啓蒙の時代に、遡らなければならない。
ヨーロッパでは十七世紀に入ると、啓蒙主義が大きな力を持つようになった。
啓蒙の時代が到来したことによって、ヨーロッパがキリスト教原理主義の支配による拘束から解き放されて、人間の理性と、科学を尊ぶようになった。
フランス革命は、啓蒙の時代の申し子だった。
フランス革命は「理性の祭典」と呼ばれて、科学的合理主義と、「自由、平等、博愛」の標語をかざして、そのもとで、おぞましい恐怖政治が行なわれた。革命は流血の惨事であり、神と伝統文化を否定した。
フランス革命は、大量殺戮を行なった。毎日、革命の敵とされた人々が、休みなく断頭台に送られて、処刑された。
日本から、ノートルダム大寺院を訪れる無邪気な観光客が、そろって「荘厳だ」といって、感心する。しかし、フランス革命によって、ノートルダム大寺院から聖像がいっさい取り払われて、「理性の伽藍」と改名されたことを、知らない。
ノートルダム大寺院には、おぞましい過去が宿っている。
新政府によって祭壇が壊されて、そのかわりに模造の丘のうえに、「知性に捧げられた」ギリシア神殿のミニチュアが、安置された。
その右には、裸の「理知の女神」像が、赤白青の三色の腰布を巻いて立ち、左に「真実の炎」と呼ぶ常明灯が、ともされた。
アメリカはいつまで超大国でいられるか 第3章お節介で不思議な国・アメリカ
バックナンバー
新着ニュース
- エルメスの跡地はグッチ(2024年11月20日)
- 第31回さいたま太鼓エキスパート2024(2024年11月03日)
- 突然の閉店に驚きの声 スイートバジル(2024年11月19日)
- すぐに遂落した玉木さんの質(2024年11月14日)
特別企画PR