トップページ ≫ コラム ≫ 男の珈琲タイム ≫ 菊池寛や倉田百三から学んだ「許す」ということ
コラム …男の珈琲タイム
オバマ大統領が被爆の地広島にくるという。何んとも意義深いことだ。その政治的背景や政治的意義は割愛するが、人間の最も大切にして美しい所作は「許す」ということと「和解」だと思っている。怒りやうらみの蓄積からは何も生まれない。時間の中で溶かし、またあらたなものを醸していくところに人間の人間たるゆえんがある。
学生の頃、倉田百三に共鳴した。「愛と認識との出発」からはじまって「出家とその弟子」等、何回も読んだ。その中味は究極のところ、「許す」ということがこんなにも素晴らしいことなのかと、青年の私は感涙すらしたものだ。倉田百三は頭の出来もよかったが、病魔と闘いぬいてきた人だった故に人間の悲しみと同時に、全てのことを甘受しながら生涯を送ったからこそ、書けたのだろう。
また、同世代を生きたかの菊池寛にも惚れた。菊池は倉田とはちがう境遇の中で生きた。大らかな精神の持主だったらしい。だからこそ、文芸春秋社という出版界の金字塔を建て、経営者としても秀でていた。「恩讐の彼方」や「父帰る」などの作品は、人は大らかでなかったら進歩もはじまりもない。許しあわなかったら、人も会社も駄目になるという信念からのものだったのだろう。
うらむのは人間の業のようなものだ。嫌いという感情もどこかで接点がある。しかし、私は生涯、おおらかでありたいと思う。悠々亭玉介師匠が教えてくれた「あなたね。怒りは無知、涙は修行、笑いは悟りなんだよ」と。
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