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外交評論家 加瀬英明 論集
ここで、第二次大戦後のオバマ大統領にいたるまでの12人の大統領を、外へ向かって、積極的に立ち向かう政策を取るリーダーと、内に籠るリーダーに分けてみるとすれば、トルーマン、ケネディ、リンドン・ジョンソン、レーガン、ブッシュ(子)の6人が、前者のグループに分類されよう。
後者の内へ籠るタイプのなかに、アイゼンハワー、ニクソン、フォード、カーター、オバマの5人が入ろう。
ブッシュ(父)と、クリントンの2人は、その中間になるだろうか。
オバマ大統領も、前任者が引き起こして、失敗した戦争の後始末を、委ねられている。
オバマ大統領は、2013年5月に国防大学を訪れて、
「われわれは過去10年間だけでも、連邦債務が膨らみ続け、国民生活が困難を増すなかで、戦争のために1兆ドルを費やした。いまこそ、われわれはアメリカのもっとも重要な資源である、アメリカ国民に積極的に投資しなければならない。国内において、国家を建設することに力を注ごうではないか」
と、演説した。
そういえば、ケネディといえば、ケネディ大統領を取り巻いていた側近のプレインの一人で、同政権のもとで駐インド大使をつとめた、高名な経済学者であるケネス・ガルブレイス教授を、ボストンの自宅にたずねたことがあった。
アメリカ人の友人が、ガルブレイス教授と親しく、私が教授の新著を邦訳することを頼まれて、引き受けたからだった。
ジョンソン政権の時で、アメリカでは若者を中心とするベトナム反戦運動が、絶頂期にあった。
ガルブレイス教授が、私に「ベトナム戦争は不道徳な戦争だ」というので、「しかし、あなたはケネディ大統領の側近のなかの側近として、ベトナムに軍事介入すべきだと、強く主張したのではありませんか?」と、たずねた。
すると、私の質問が信じられないという、怪訝な顔をして、「勝つ見込みがない戦争を戦うのは、不道徳ではないですか」と、訊き返された。
その時に、私は日本人の戦争観と、何と大きく違うのだろうかと、驚かされた。
そして、もし、日本が先の大戦でアメリカに勝っていたら、日本が今日のようにお詫びを特技とする、似非平和主義国家となるはずがなかった。そうなってしまたのは、戦勢が絶望的になるまで戦って敗れたのが、「不道徳的」だったと、国民が感じているためなのだろうと、思った。
日本国民は現実よりも、精神を尊ぶことから、同盟と道徳を結びつけて考える。
そのために、同盟関係や、条約をどのようなことがあっても守ることが、道徳的な努めであると信じているが、アメリカ人はもっと功利的なのだ。
世界の外交史を学んだ者であれば、同盟関係は平時においては抑止力となるものの、いったん有事の事態に見舞われた場合には、あてにならないから、同盟関係や、条約に過剰に依存してはならないことを、知っている。
アメリカはいつまで超大国でいられるか 第4章アメリカがメチャメチャにした中東の10年
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