トップページ ≫ 外交評論家 加瀬英明 論集 ≫ アメリカはなぜ、中国が好きなのか
外交評論家 加瀬英明 論集
アメリカ国民は、中国に清朝末期から、魅せられてきた。今日でも、アメリカ国民の対中感情の芯をつくっている。第二次大戦を日本と戦った、ルーズベルト大統領がその代表的な一人だった。
ルーズベルトは幼かった時から、中国を身近な国として感じて、好意を寄せていた。
ルーズベルトの母方のデラノ家は、清朝末期に中国とのアヘン貿易によって、巨富を築いていた。デラノ家は香港にも、豪邸を所有していた。母のサラは、少女時代を香港で送ったことがあり、ルーズベルトは幼いころから、中国について話を聞かされて、中国に愛着をいだいていた。
ニューヨーク州のハドソン川上流のハイドパークにある、ルーズベルトの広壮な邸宅には、母方の祖父が中国から掠奪してきた、古寺の鐘や、高価な屏風や、陶器や、美術品が所狭しと飾られていた。
ルーズベルト大統領は、日米開戦のはるか前から中国を援けて、日本を滅ぼそうと、決意していた。
蒋介石政権は第一次上海事変以後、アメリカに巨額の資金をばら撒いて買収し、反日宣伝を行なった。いま、中国は蒋政権と同じことを、アメリカにおいて行なっている。
私はニクソンの後を継いだ、フォード大統領と親しかった。
キッシンジャーはフォード政権の国務長官もつとめたから、フォード大統領とともに、何回か、キッシンジャーと同席したことがあった。
キッシンジャーは、高慢だった。大統領がちょっと席を外すと、すぐに大統領を小馬鹿にしたが、大統領が戻ってくると、たちまちのうちに恥じることなく、諂った。
私はキッシンジャーに、
「なぜ、アメリカ人は日本人よりも、中国人を好むのだろうか」
と、たずねたことがある。すると、
「中国人は、意見をはっきりという。そして論理的だ。あなたがたは黙ってばかりいて、いったい、何を考えているのか、よく分からない」
と、言った。
私の多くのアメリカの友人たちが、日本人は自分の考えをはっきりと述べないので、何を欲しているのか分からないから、戸惑わされると、愚痴をこぼすのだ。
アメリカも、中国も、異民族がつねに行き交い、競い合っている。異民族のあいだでは生活文化が違うために、心が通じないから、意見をはっきりと伝え、論理を駆使して、相手を説得するか、言い負かさねばならない。だから、アメリカ人も、中国人のどちらも、声が大きい。
それに対して、日本人は和を乱すことがないように、つねに心を砕いているから、寡黙である。はっきりと主張することを、できるだけ避けようとする。
何よりも、日本社会では、饒舌であってはならない。無口な人が多い。世界のなかで、心が通い合う、珍しい同質な国民だ。
アメリカ人は日本人が和を保つために、曖昧な態度をとることを、とうてい理解することができない。
アメリカ人のなかに、日本人のように寡黙な者は、一人もいない。そこで、口数が少ないと、狡いから口を閉じているのだろうと、誤解する。
日本が譲り合い、謝り合う文化であるのに対して、アメリカも、中国も、主張し合う文化なのだ。
日本人は互いに察し合って、遠慮しながら、自己主張する。かりに、10のものが欲しいとしたら、7か、8をいって、交際を続けるうちに、いずれ相手が3か、2、上積みしてくれることを、期待する。
アメリカ人と中国人は、10が欲しかったら、14か、15か、20を吹っかけてから、値切り合う。
アメリカ人と中国人は、食事といえば、味が濃く、油っぽいものを好むのに対して、日本食は淡白だ。日本人は何ごとについても、控え目である。
アメリカ人と中国人は、北京の故宮や、グランドキャニオンのような大きなものや、贅を凝らして、金銀や、宝石をふんだんに使った、一見して高価なものを好む。
日本人は伊勢神宮や、桂離宮のような簡素な建造物を好むし、宝物というと、木彫の古びた仏像や、茶器のように、地味なものを尊ぶ。壊れたら、無価値な木片か、土塊になってしまうものばかりだ。
大方のアメリカ人と、中国人は即物的だから、このような日本人の好みを、理解することができない。
日本人は西洋化するまでは、アメリカ人や中国人と違って、金銀や、宝石のように光るものや、これ見よがしのものを、疎んだ。
アメリカはいつまで超大国でいられるか 第5章中国に眩惑されたアメリカ
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