トップページ ≫ 外交評論家 加瀬英明 論集 ≫ 「フレネミー」という新語に表われたアメリカの中国観
外交評論家 加瀬英明 論集
アメリカ人と中国人は、拝金主義者だ。少しも照れることなく、金を話題にする。
私はアメリカに講師として、しばしば招かれてきたが、日本であると、「講演料はどのくらい差し上げましたら、よいでしょうか」と、直接、たずねられた場合に、金額を言いにくいものだ。
日本ならば、「規定で結構です」とか、「〈私の〉事務所のほうにおたずねください」と答えるところを、アメリカであれば、はっきりと遠慮することなく、これだけ欲しいと、具体的な金額を示すことができる。「私は高いんです」(アイム・エクスペンシブ)といっても、納得してくれる。
旧正月になると、中国から年賀状が送られてくるが、「金運福運」と、「金運」が何よりも、先に書かれている。私たちには品性に欠けるように思われるが、金運が何よりも大切なのだ。
中国人とアメリカ人は、富を崇めて、それを得ると誇示する。
快楽をあけっぴろげに追うところも、日本人と異なる。日本人は、禁欲的だ。
日本人も、贅沢や、快楽を好んでいるとしても、それを表に出すことをしないし、贅沢を楽しむとしても、同時にもったいないと思って、どこかで後ろめたさを、味わっている。
アメリカ人と中国人が、派手な色を好むのに対して、日本人はけばけばしい色彩を嫌ってきた。
中国人が利己的であるのに対して、日本人は東日本大震災の被災民が譲り合って、世界を驚かせたように、利他的である。アメリカ人は、中国人に近い。
多くのアメリカ人が、中国人のように、自分のものは自分のもの、他人のものも自分のものと思うところも、似ている。
このように、アメリカ人と中国人には、共通点が多い。
日本はアメリカ人にとって、きわめて異質な文化なのだ。
アメリカ人は日本人よりも、中国人のほうにはるかに近い。
米中貿易が2013年に、5590億ドルに達した。米中間の貿易額が増えるなかで、アメリカの対中貿易赤字が、3000億ドル以上に膨らんだ。米中貿易は1979年に米中国交正常化が行なわれた2年後をとると、わずか50億ドルでしかなかった。
2013年の数字は、アメリカがいかに中国の輸出を貪欲に吸収してきたか、物語っている。
それでも、ワシントンがこのところ中国に、アメリカからの輸入を増すように、強い圧力を加えてきたために、アメリカの対中輸出が、中国による対米輸出よりも、高い率で伸びている。そのかたわら、中国が溜め込んだドルを使って、中国の対米投資がアメリカによる対中投資を大きく凌いで、急成長するようになっている。
いずれにせよ、両国の経済の相互依存が、いっそう強まっており、アメリカは中国経済の蜘蛛の網によって、搦めとられている。
ソ連は、アメリカと真正面から対決する、強力な敵だった。
米ソ間には、米中関係のように、経済的な相互依存関係が存在しなかったから、ソ連を敵として、はっきり見ることができた。
ところが、いまでも、アメリカは中国が敵であるのか、友であるのか、決めることができかねている。
そこで、このところ、アメリカのマスコミでは中国を指して、「フレンド」(友)と「エネミー」(敵)の二つの言葉を合成して、「フレネミー」という言葉が造られて、しばしば用いられている。
アメリカはいつまで超大国でいられるか 第5章中国に眩惑されたアメリカ
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