文芸広場
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ここは映画館。前の座席にはカップル。20代の女性と40歳位の男性。もしかして夫婦なのかもしれない。
彼は、少々ご機嫌ななめ。小さな声でぶつぶつと文句を言いつつ、女性の腕を軽くつねる。
痛い痛いと女性が言うので、軽くもないのかも。何度かつねったり、言い合ったりがあって、なかなか止まぬので、映画を待つわたしは心配になった。
めんどくさいカップルの後ろに座ってしまった。このまま止まらなかったら、映画を落ちついて見られないよ。すぐ前の座席なので、気になってしまう。
結局言い合いは止まったからよかったのだが、今度は彼女がかいがいしく彼の世話を始める。自分の汗を拭いたら、彼のおでこも拭いてあげる。そして、カバンからあるものを取り出し、彼の世話。
あるもの、それは、小さなハサミと柄の長いコーム。彼女は彼の眉毛にコームを当て、チョキチョキとカットする。なぜここで、眉毛カットを?ちなみにカットされた毛はそのまま下へ?
嗚呼、気になって仕方がない。先程、夫婦かもと思ったが、夫婦ではない気がする。通常の夫婦は、人前でこんなに「ふたりの世界」にひたれない。彼の眉毛や汗よりも公共のことを考える。眉毛で床を散らかしては駄目だとか。とにかくカップルが気になる。
上映時間になって、暗くなった。わたしは映画の世界に意識が移った。
彼の眉毛カットはしたことないが、わたしにもかつて「ふたりの世界」はあったような気がする。
今は無き世界を感じて家に帰ると、自分の眉毛の手入れを始めた。
檀 ままこ
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