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他人事では済まされない深刻な2025年問題
2016年09月21日
「2025年問題」とは何なのか。第一次ベビーブームに生まれた団塊世代が、2025年に後期高齢者(75歳以上)となる。そのことの何が問題なのか。団塊の世代は、日本の人口の中でもっとも多いとされている。つまり、後期高齢者が急激に増加して、現在抱えている少子高齢化問題に拍車をかけることになるのだ。医療の問題、認知症高齢者の増加、介護の問題、社会保障費の問題、死の問題、住まいの問題など。2025年は始まりにすぎず、この問題はずっと続いていく。
小学生の頃の授業で、「将来子供と高齢者の数が逆転し、少子高齢化の時代が来る。国民一人当たりの高齢者を支える人数が増え、さまざまな問題が起こる」と教わった。高齢者を頂点とするピラミッド型のグラフが逆ピラミッド。当時全く意味がわからなかったが、こうして覚えているのは、わからないなりに強烈なことだったのかもしれない。
今急に降って湧いた問題ではなく、昔からずっとわかっていたことなのだ。国や自治体などが重い腰を上げて本格的に動き出したのは、ここ数年のこと。国策として地域医療構想の策定と地域包括ケアシステムの構築を進めている。埼玉県では、埼玉県地域医療構想案をまとめたところだ。地域包括ケアシステムの構築に関しては、新座市、蕨市、羽生市、川島町をモデル事業実施市町として、平成28年度から「自立促進」、「介護予防」、「生活支援」の3つの事業について、各市町の地域特性を生かした実施を行なっている。
2025年問題は、医療や介護の人材不足と社会保障費のさらなる増大という二つの大きな問題を抱えている。今は約75%の人が病院で亡くなっているが、後期高齢者の増大で、必要病床数が圧倒的に足りなくなる病院や地域が増える。医療ニーズと供給体制のアンバランスが顕著になり、「医療難民」の発生が予想される。また介護事業所についても、今でも高齢者の数に対して施設の数が不足しているといわれている。施設を増やせばよいという単純なものではなく、介護報酬の減額や人件費の高騰から人員が確保できず、対応できない可能性もある。介護でも「介護難民」が予想される。
社会保障費とは、年金や医療、介護などにかかる費用のこと。社会保障費は2010年以来、毎年100兆円を超えている。そのような中、現在社会保障費を払う立場にある団塊の世代が、後期高齢者となることで給付を受ける立場に変わり、現役世代の大幅な負担増は確実で、それでも社会保障の財源が破たんするかもしれない事態が待っている。
待ち受ける不安だらけの将来に、私たちひとりひとりができることはないのだろうか。避けられぬ2025年問題に危機感を抱き、行動している地域が埼玉県にある。幸手市と杉戸町だ。「街づくりが2025年問題突破のカギ」と、在宅医療推進を含む地域包括ケアシステム「幸手モデル」と呼ばれる取り組みをしている。住民と医療者が手を組み、高齢者を支える地域活動だ。幸手市と杉戸町の人口は合わせて約10万人で、高齢化比率は約30%。埼玉県の10万人あたりの医師数は152.8人と、全国で最も少ない。幸手市と杉戸町を含む利根保健医療圏は114.6人と、さらに少ない。医療資源の乏しさが背後に存在している。
2025年問題は社会的な問題だけではなく、家庭や個人レベルで誰もが直面する問題だということがよくわかる。国や自治体が今現在進めている政策がより良い方向へと働き、最悪の事態を招かないことはもちろんだが、顔の見える住民同士が手を取り合って、自助、共助の取り組みを進めていくことが大きな力となるのだろう。また、普段から生活習慣や食生活に気を配り、できるだけ病気とは縁遠い体作りをすることが、多岐にわたる問題の解決へとつながることは間違いない。
自分自身の人生をどう送り、どう終えたいか。シンプルに考え行動することが、案外複雑に絡み合う問題の解決の糸口なのかもしれない。
岡 アヤコ
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