トップページ ≫ 外交評論家 加瀬英明 論集 ≫ インドが抱える中国と領土紛争
外交評論家 加瀬英明 論集
私はBJP(インド国民会議)政権のフェルナンデス国防相と、同志の間柄だった。インドはフェルナンデス国防相のもとで、1998年に核武装した。
フェルナンデス国防相に招かれて、国防省で、参謀総長以下の軍幹部に講演したことがあった。私が中国の人民解放軍からしばしば招かれて、意見の交換をしてきたことを知っていたので、中国について話してほしいと、求められた。
当時、中国は日本の尖閣諸島を含めて、五つの国に対して、同時に不当な領土要求を行なっていた。
中国は1962年に、人民解放軍がインド国境地帯を奇襲して、チベット、カシミール地方の間にあるラダック地域と、インドが領有するチベットの一部を占領した。この時、中国がインドから奪った面積は、九州よりも大きい。
中国はいまでもインド北東部のアルナーチャル・プラデーシュ全州に対して、領有権を主張している。
私は中国の指導部は権力闘争によって、意思を統一することができないうえ、頭脳が中華思想によって、すっかり爛れているために、戦略的な思考ができないと、説いた。
私は中国が戦略的な計算ができるのであれば、同時に多くの国から奪おうとせずに、まず、1カ国か、2ヵ国を脅して、領土か、海洋権益を掠め盗ったうえで、つぎに1カ国か、2ヵ国から奪うことを試みるだろうと、述べた。
また、軍が上から下まで腐敗しており、全面戦争を戦う能力がないために、国内的な事情によって暴走して、軍事冒険に乗り出さないかぎり、恐れることはないと指摘した。
中国は、今日、日本、インド、インドネシア、ブルネイ、マレーシア、ベトナム、フィリピンの七つの国から、領土を略取しようとして、紛争を発生させている。ブータンも、中国の領土的野心を、強く警戒している。
ところが、7カ国の人口を合計すると、20億人を超え、経済力においても、中国を上回る。ひと言でいって、中国の指導部は、愚かなのだ。
日本は、中国の愚かさによって、救われた。
もし、中国が尖閣諸島を略取することだけに専念して、同時に南シナ海において、フィリピン、ベトナムから露骨に島嶼や、海底資源を奪おうとしなかったとすれば、アメリカをはじめ世界の国々が、中国の尖閣諸島に対する領土権主張を、受け入れかねないところだった。
モディ首相は就任直後に、ブータンを訪問したが、9月に日本を2番目の訪問先として選んだ。来日するに当たって「日本との保安協力」を強く望むという、談話を発表した。
日本としては、日印関係を深化することが、求められる。
このままゆけば、中国は体制の国内基盤が弱まってゆくなかで、武装民兵を使って、尖閣諸島を奪おうとするだろう。
中華人民共和国憲法は、「人民武装力」として、陸海空人民解放軍、核ロケット部隊、人民武装警察に加えて、民兵を規定している。民兵のなかに、海上民兵が存在しているが、漁民によって、構成されている。
2014年4月に、ヘーゲル国防長官が訪中して、米中国防相会談が行なわれた直後の共同記者会見で、記者団から尖閣諸島について質問が出たのに対して、常万全国防相が「党と人民の要請を受けて、中国軍は直ちに集結し、現地に到着して直ちに戦い、いかなる戦闘にも勝利する」と、述べている。
アメリカはいつまで超大国でいられるか 第7章中国、インド、ロシアは、アメリカを超えられるか
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