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追われる浦高VS追う栄東 埼玉県内高校勢力図は本当に変わるのか~前編
2016年10月05日
今春,埼玉の教育業界・教育関係者が一様にビックリした『今春の「東大合格者数ランキング」で浦和高校が初めて県内第一位の座を私立の栄東高校に譲った』件は,3月に紹介された「合格者ランキングの下剋上が埼玉県でも-東大合格者ランキング発表」という速報記事が,半年経過した今でもアクセスランキングに顔を出していることからも,その関心の高さがうかがえます。
「東大合格者数がすべてではない」という声があるのは承知していますが,オリンピックにおける金メダルの数と同様に,高校の実力を測る最もわかりやすい指標として語られることが多いのも事実なので,ここでは大学合格実績に注目していきます。
はたしてこの「下剋上」は一過性のものなのか,それとも本当に埼玉県内の高校勢力図が書き換えられてしまうのでしょうか。その原因分析と今後の動向予測について,
浦高,どうしちゃったの?
栄東って学校,よくわからないのだけど・・・
という方に向けて紹介していくことにします。
○栄東の勢いを示す「驚愕の数字」
栄東,という学校の名前を聞いて皆さんはどんなことを思い浮かべるでしょうか。「昔は男子校で,埼玉栄東という校名だった」という方,「高校生クイズの常連だった浦和高校をついに蹴散らして全国大会に進み,いきなり準優勝した」という方など,世代によって印象が大きく違う高校だと思われます。
栄東高校は,「昭和の終わり~平成の初め」の頃は進学校として位置づけられていたものの,浦和・大宮在住の上位生からは西武文理・城北埼玉ほどの評価はされていませんでした。転機は1992年(平成4年)で,栄東中学を開校させて中高一貫教育をスタートし大学合格実績の向上を目指し,並行して高校では1994年(平成6年)の入学者から共学とし,女子の認知度アップが学校全体に好影響を及ぼしました。
昨今の躍進の秘訣が「栄東中学のレベルアップ」にあることはいうまでもなく,2001年から始まったいわゆる「ゆとり教育」を追い風とし,1999年に開校した開智中学,2005年に開校した大宮開成中学との「立地を活かした相乗効果,注目度アップ」もあって,その人気は高まっていきました。
そして現在,栄東中学への応募者数は「驚愕の数字」となっています。次の表をご覧ください。
入試年度 |
応募者数(のべ) |
備考 |
2011年春 |
約 7,000人 |
現高3,2017年春大学入試 |
2012年春 |
約 8,200人 |
|
2013年春 |
約 9,700人 |
|
2014年春 |
約10,000人 |
現中3,現行のセンター試験最終実施学年 |
2015年春 |
10,976人 |
|
2016年春 |
10,290人 |
|
この中学への応募者数は,ここ3年10,000人を上回っています。この数字は中堅私立大学の応募者数に匹敵するもので,この中学の目玉である「東大クラス」への合格を希望する者だけでも2016年春には3,000人を上回る応募者があったことは,中学入試関連の情報を集めている方以外にはあまり知られていないことだと思われますが,現在これほどの実力を備えた学校となっているのです。
もちろん,日程の都合上都内在住者の「お試し受験」の場でもあること,受験料が「2回で20,000円」と複数回受験しやすい仕組みになっていることが応募者大幅増の要因として挙げられますが,応募者が増えればそれだけ優秀生に入学してもらえるチャンスは増え,何より受験料収入が施設拡充や教員の待遇改善に直結するわけですから,入学者の期待に応え続けることでまずます勢いがつくことでしょう。 表からもわかるように,栄東で6年間の一貫教育を受けた生徒は,そのレベルが来年,来年よりも再来年,と向上していく可能性が高いので,大学合格実績においてはまだまだ上積みされることでしょう。
○追われる浦和高校が苦戦した理由
それに対して,とうとう東大合格者数首位の座を明け渡してしまった浦和高校に目を向けます。この原因として「2016年春の卒業生が抱えていたある事情」について紹介しなければなりません。次の表をご覧ください。
高校入試 年度 |
大学入試 年度 |
埼玉公立高校入試 数学平均点(全体) |
浦和高校 倍率 |
備考 |
2011年春 |
2014年春 |
前期40.4 後期47.6 |
|
入試回数2回(前期後期)の最終学年 |
2012年春 |
2015年春 |
36.5 |
1.26 |
現行の高校入試制度初年度 |
2013年春 |
2016年春 |
42.4 |
1.50 |
今春の大学受験学年 |
2014年春 |
2017年春 |
45.0 |
1.45 |
現高3 |
2015年春 |
2018年春 |
48.1 |
1.55 |
|
2016年春 |
2019年春 |
51.1 |
1.28 |
|
今春浦和高校を卒業した生徒が高校入試に挑んだ年(2013年春),浦和高校の倍率は1.50倍でおよそ200人の受験生が涙を流しました。この200人が成績的に足りなかったことは事実ですが,もしかするとこの中には「変化の波に翻弄されてしまっただけの優秀生」が少なからず含まれていた可能性を否定できないのです。この「変化の波」こそが今春の卒業生が抱えていた事情であり,この変化の正wp通して浦和高校の現在と未来について考えていきます。(つづく)
教育クリエイター 秋田洋和
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