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追われる浦高VS追う栄東 埼玉県内高校勢力図は本当に変わるのか~後編
2016年10月06日
埼玉県の公立入試は,2010年(H22)から「100点満点(それまでは40点満点)」に変更されました。数学では証明問題が「完全記述」になるなど全体的に難化し,2011年春の入試では前期の平均点が40.4点(全体)まで低くなってしまったのです(上表参照)。ここまで難化すると,浦和高校受験生とはいえそうそう高得点を狙えるものではありません。合格するための戦略として「差がつかない数学は重視せず,他の教科で得点を稼ぐ」ための準備が主流になるは当然のことで,結果として同じような準備をしてきた生徒たちが集まってくることになってしまいます。それでもこのときは「後期入試」で再チャレンジできたので,例えば「前期は浦和高校に出願したけれど,後期はランクを落として安全策をとる」という戦略で「挑む気持ち」を持って受験に臨むことができました。しかし2012年春の入試では入試回数が1回になり,過去のデータが使えなくなるためどうしても安全志向の受験パターンを組む傾向にあったことは,この年の浦和高校の倍率(1.26倍)からも窺い知れます。
それを見据えての2013年春受験組(今春の大学受験生)は,どのような戦略を立てて高校受験に臨んだのでしょうか。数学の平均点は前年36.5点(全体)まで低くなったので,数学では差がつかない状況は継続。「英語を中心とする文系教科の出来不出来が合否に大きく影響する傾向」が強まったと判断したでしょうから,おそらく多くの塾が「浦和高校対策」の準備を万全に行い,それが倍率の増加につながったと見ることができます。
この結果,おそらくこの年の浦和高校入学者の質は,過去10年程度のスパンで見ても明らかに違っていた(従来とは異質,同じような成績分布の生徒が多くなった)ことが推察されるのです。
それを裏付けるデータとして,浦和高校の大学合格実績の推移をご覧ください。
高校入試 年度 |
大学入試 年度 |
埼玉公立高校入試 数学平均点(全体) |
浦和高校 国公立大学 合格者数 (現役) |
浦和高校 東京大学 合格者数(現役) |
2008年春 |
2011年春 |
19.5 (40点) |
98 |
14 |
2009年春 |
2012年春 |
21.2(40点) |
100 |
14 |
2010年春 |
2013年春 |
前期42.4 後期44.3 |
116 |
20 |
2011年春 |
2014年春 |
前期40.4 後期47.6 |
75 |
17 |
2012年春 |
2015年春 |
36.5 |
83 |
12 |
2013年春 |
2016年春 |
42.4 |
94 |
4 |
2014年春 |
2017年春 |
45.0 |
|
|
2015年春 |
2018年春 |
48.1 |
|
|
2016年春 |
2019年春 |
51.1 |
|
|
2015年春の卒業生,2016年春の卒業生には「東大合格者は減少したけれど,国公立大学の合格者数は増加した」という共通の特徴が見られます。比較として提示した2011年春~2014年春の卒業生のデータからは「東大合格者数と国公立大学合格者数は,おおまかに見て比例していた」ことがわかりますので,「入学者の質が変わった」という可能性は捨てきれません。乱暴な言い方をすれば,「高校入学までに身につけた『守りの姿勢』が大学入試結果にも影響を与えた」のかもしれません。
私は,これこそが「今春浦和高校が負けた原因」だと考えています。生徒がさぼったわけではなく,先生方がさぼったわけでもない。この原因は「高校入学前の準備・姿勢」にあって,おそらく3年前に涙を流した200人との間に,大学受験で「逆転」が起こったケースもあるだろうな,と思うのです。
次に,浦和高校の未来について考えます。入学時の「数学平均点」は,今春の卒業生を底として上昇に転じていますから,高3,高2,高1と学年が下がるごとに「数学で差がつく」状況が生じていると推察します。今春からは英数で「学校選択問題」を実施するので(詳細は【高校入試】平成29年度埼玉県公立高校入試の重要な変更点(2)を参照ください),大学合格実績は上昇に転じるのではないかと期待しています。
最後に,浦和高校卒業生の名誉のために申し上げますが,これはあくまでも私の考えであり,今春卒業生の何割が「挑む気持ち」を持って入学し,それを持ち続けたのかなんて検証は当然できません。
大学合格実績は指標の1つにすぎませんから,どうか大学受験の経験を糧として将来様々な世界で活躍され,私の推察を「間違っていた」と実証してくださることを心から願っています。(おわり)
[追われる浦高VS追う栄東
埼玉県内高校勢力図は本当に変わるのか~前編 http://www.qualitysaitama.com/newspost/40409]
教育クリエイター 秋田洋和
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