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空手の五輪出場で困惑している流派
2016年12月02日
2020年東京五輪の追加競技は野球、ソフトボール、空手、スケートボード、スポーツクライミング、サーフィンと決定した。この中で日本のメダル獲得の期待がかかるのは野球、ソフトボールと並んで空手があげられる。空手は男女とも型と組手の種目があり、組手は体重により3階級があるので計8種目となり、多数のメダルも夢ではないのだ。なにしろ、沖縄伝来の空手は日本が本家なのだから。とはいえ、今や世界に広まり、世界空手連盟(WKF)の加盟国は190近く、競技人口は6000万人(愛好者数は1億3000万人)というから、強豪国もあり、楽観はできない。
日本の空手界は寸止め(当てる直前に止める)ルールの伝統空手と直接打撃制のフルコンタクト空手に分かれている。国際オリンピック委員会(IOC)は伝統空手のWKFを空手競技の運営主体としているから、そのメンバーである全日本空手道連盟(JKF)が出場選手を決定するはずだ。そうなるとフルコンタクト系の選手の出場は難しくなる。IOCは格闘技で直接打ち合うのを排除する傾向があるという。伝統空手も昔は直接当てていたのだが、あまりに危険なので寸止めにしたという事情もある。
オリンピックへの道が閉ざされれば入門者が減るだろうから、フルコンタクト空手道場にとっては死活問題にもなりかねない。以前は絶縁状態だった両派だが、オリンピックを機に歩み寄り、友好関係への動きも出てきた。伝統空手が選ばれた以上、そのルールによる稽古にも取り組むというフルコンタクト流派もある。
伝統空手優先ということには意外感を持つ人も多いだろう。日本のマスコミ等に登場する空手家は圧倒的にフルコンタクト系が多い。この流派の祖たる大山倍達は漫画『空手バカ一代』(原作・梶原一騎 作画・つのだじろう 影丸譲也)で一躍有名になり、彼の極真空手の流れをつぐ人たちが次々に新組織を誕生させた。彼らが格闘技ブームの火付け役であり、総合格闘技「K-1」を立ち上げ、大みそかの『紅白歌合戦』と同時間帯にテレビ中継されるまでになった。
30年ほど前に格闘技本の編集にかかわったことから、私はフルコンタクト系の空手家とは接触があったが、彼らのビジネス感覚、メディア戦略には少なからず感心した。大山倍達にしても、漫画ではかなり誇張して描かれているとは思ったが、「牛殺し」とかの話が伝説化され、事業家としても成功した。彼の弟子や孫弟子たちが独立していったのも、自分たちも師のように成功したいとの思いがあったからではないか。そこにはメディア戦略が不可欠だ。彼ら同士はもとは同門でも独立後は冷たい関係だった。
空手は世界での普及度も高く、東京以降のオリンピックでも継続採用される可能性がある。そうなった場合、フルコンタクト系流派は自分たちのスタイルを封印してまで慣れないルールに従うのか。仲のよくない各流派が一つにまとまって方向を打ち出すとは思えない。だが、そこはビジネス感覚の鋭さで、うまく立ち回っていくのかもしれない。
山田 洋
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