トップページ ≫ 文芸広場 ≫ そして生活は続く~『この世界の片隅に』
文芸広場
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戦争をテーマにした映画で、こんなに笑ったのは初めてだ。
先日、映画『この世界の片隅に』を観た。この映画を観る前と後では自分のなかの何かが違う。
広島の呉を舞台に主人公すずの少女時代から結婚後の戦時下の日常生活、終戦までを描いたものだが、とにかくすずさんが魅力あふれる人物で、誰もが好きにならずにはいられないのだ。声を演じたのんがこの役にぴったりで、のほほんとしたすずさんそのもの。監督がインタビューに答えている映像を観たが、監督はやはり主人公のことをすずさんと呼んでいた。すずさんは作品の中で、瑞々しく生活していて、現在はのほほんとしたおばあちゃんになって、日本のどこかにいるような気がしてならない。
すずさんは、戦時下の食料不足のなかでも、明るく工夫して暮らす。その時代、主婦は皆、懸命に暮らしていたのが伝わってくる。食べられる雑草も工夫して料理する。衣類は、着物をもんぺに作り変えて着る。どんな時にも生活は続く。
生活の丁寧な描写を観て、日頃、食事作りを面倒に感じている自分を恥じた。映画館から帰宅して食べた夕食はいつもと違う味がした。いつもどおりの簡単な料理ながら、有り難く、そしてとても美味しかった。
映画の前半は特に明るく笑いに満ちているのだが、後半は広島への原爆投下へと時が進んでいくなか、すずさんもだんだん笑わなくなってゆく。映画のなかでは、淡々と明るい日常生活の描写が多いだけに、その裏側の戦争の悲惨さが強く印象づけられる。
老若男女、すべてのひとに観てもらいたいと思える映画だった。生活への愛しさと生きることについて考えさせられる。また、すずさんのだんな様 周作さんの甘い声と優しさにときめいてしまったことも書かずにはいられない。さらに、すっかり映画に魅せられて原作本と公式ガイドブックを買いに走ったことも。
檀 ままこ
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