トップページ ≫ 外交評論家 加瀬英明 論集 ≫ 神道の自然観と『クマのプーさん』
外交評論家 加瀬英明 論集
ジョンはイギリス中北部の港湾都市のリバプールで生まれて、育った。
私はジョンに神道の自然観について説明した時に、イギリスの子どもだったら誰でも知っている、『クマのプーさん』を例として挙げた。
小さなクマのプーさんは英国民には、ウィニー・ザ・プーとして知られている。プーはさまざまな動物が棲んでいるイギリスの森を舞台にした童話の主人公だ。
プーはクリストファー・ロビンという少年がもっている縫いぐるみなのだが、森のなかで他の動物たちと一緒になって、冒険をしたり、仲間たちと楽しい日々を送っている。
プーは善意にあふれて、楽観的で謙虚だ。深い森のなかには、子ぶたや、ロバ、兎、カンガルー、その子のルー、知恵者のふくろうといった仲間が棲んでいる。
プーの生みの親や、アラン・アレキサンダー・ミルン(1882年~1956年)だが、イギリス人はことさら動物や妖精を好んでいるから、プーや、『不思議の国のアリス』に登場するキャラクターが、大人の世界に入り込んでいる。
プーは、森を恐れない。森と仲間たちを愛している。問題が起こるたびに、プーは自作の歌を歌いながら、解決に乗り出す。そして、いつも「ベア・ウィズ・ベリー・リトル・プレイン(小さな脳ミソしかもっていないクマ)」だと、自分に繰り返して、いいきかせる。
森には、教会もない。プーと仲間たちにとって、森が天国である。プーはいつだって、明るい。”プーの森”では、ロビン少年も、プーも、動物たちも、みな平等だ。まるで、神道の杜のようだ。
日本人にとっては、動物も、魚介類も、虫も、草木も、生きているものはすべて仲間である。
日本の神社のなかでは、稲荷社がもっとも多い。稲荷社は全国で三万社以上あるといわれるが、狐を神の使いとして、祀っている。
江戸時代には、庶民のコトワザとして、「伊勢屋、稲荷に犬の糞」といったほど、どこにも稲荷社があった。
伊勢屋は伊勢出身者の商店で、屋号のなかでもっとも多く、いたるところにあったことから、コトワザに使われた。
それほど多かった稲荷社だが、今日でも日本中どこの町内にも、稲荷社や稲荷を祀った小さな祠がある。百貨店の屋上にもある。また多くの狐塚が、各地にのこっている。
私は動物を拝むのは、よいことだと思う。動物は人間のように嘘をついたり、騙すことがないし、必要以上に食糧や物を欲しがることがない。自分たちの種族が世界の主だと信じて、思い上がることもないし、自分の考えをまわりに強要することもない。
動物を拝むことは、人間中心主義に対する戒めになる。
西洋では、『イソップ物語』の昔から、動物を人に擬することが行なわれていた。イソップは、紀元前五世紀に生きた古代ギリシアの伝説的な寓話作家である。
『イソップ物語』には、ライオンも登場する。ライオンは”百獣の王”だといわれている。ディズニーのアニメーション映画がライオンを、「ジャングル・キング」と呼んでいるが、まさか、ライオンはそのように思い上がっていまい。
ジョン・レノンはなぜ神道に惹かれたのか 一章 ジョンが何よりも愛した日本語のことば
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