文芸広場
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娘の通う中学校の卒業式に出席した。受付で式のプログラムと一緒に封筒を渡された。中には、手紙が入っていた。家族への感謝のことばが書いてあり、式が始まる前から涙腺を刺激される。私たち家族のもとで過ごせてよかったとあった。わたしは、未熟な母と自覚しているが、それでもわが家は居心地がいいと手紙には書いてあって嬉しかった。
厳かな雰囲気のなか、式は進み、卒業生の合唱があった。埼玉で生まれた曲『旅立ちの日に』は、卒業式の定番ソングになっている。子ども達の合唱に母達の鼻をすする音が重なる。
完璧な卒業式だったと思う。PTA会長のくだけた口調の祝辞や在校生、卒業生代表による送辞と答辞。そのひとつひとつが完璧に感じられた。
卒業式を終えた後、新たに入学する高校に書類を届けに行った。偶然にも、その高校でも卒業式だった。3年後、わたしはここで娘の卒業式に出席するのだ。どんな気持ちで出席しているのだろうか。卒業式に出席した後は、様々なことがいつもより感慨深く感じられる。
事務室に書類を提出しようと校舎内に足を踏み入れると、事務室入口に卒業生と名乗る男性が。50代の男性は、母校を懐かしんで訪ねて来たらしい。その様子を目にして、思った。過去を振り返ると自分が過ごしたどの時間も自分の土台を作ったが、高校時代というものは、子どもから大人への過渡期で、未熟な者同士のぶつかり合いもあり、ぶつかりながら友人たちとすごく仲良くなれた。自分にとっての高校時代は、瑞々しい想い出になっている。この男性にとっても、ふと訪れたくなるほどに、よき想い出の地なのだろう。
3月15日、中学校の卒業式に出席していた者にとってのその日、高校の卒業式に出席していたひとにとってのその日、母校を訪ねた男性にとってのその日、それぞれの思いが色濃くなってゆらゆらと浮遊していた。
檀ままこ
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