トップページ ≫ 社会 ≫ 教育 ≫ 【高校入試】初登場した「学校選択問題」の衝撃と今後に向けた対策について(3)
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●「学校選択問題」を象徴する設問(英語編)
続いて英語ですが,新形式の英作文を紹介しないわけにはいきません。
大問4 次の英文を読んで,あなたの考えを,〔条件〕に従って40語以上50語程度の英語で書きなさい。(10点)
Some people say that students in Japan should study when they are young.
What do you think this idea?
〔条件〕賛成か反対か自分の立場を明らかにして,その理由が伝わるように書きなさい。
英作文といえば「和文英訳」,例文を丸暗記しておけばよかった時代ははるか昔。 今は英作文に「何を考え,自分なりに整理し,まとめるか」という問題解決能力が課せられていることがおわかりいただけると思います。この自由英作文の題材からもわかるように,「英語は自分の考えを述べるツールの1つである」ことを念頭において「独りよがりではない視点で物事を考え,それを的確に他者に伝え,課題を把握できること」を試される傾向は,大学入試では一足先に高まっていて埼玉県の高校入試が追随した格好になっていることを覚えておいてください。類題としては,
【2016年度早稲田大学政経学部】
次の文章を読んで,賛成か反対かの理由を少なくとも2つ挙げ,あなたの考えを130語程度の英語で述べなさい。 喫煙は日本では違法とされるべきである (原題は問題文も英語です)
を挙げることができます。語数こそ差がありますが,その設定がよく似ていることがおわかりいただけることでしょう。もはや英作文ではなくディベートに近い形式となっていて,英語力を見たいのか,それとも受験者の考え方や論理力を見たいのか,判断がつきかねます。
国公立大学の2次試験では,
【2016年度大阪大学前期】
「知識は力なり」と言われます。知識を持つということはどんな力を持つことになると思いますか。具体例を挙げ,あなたの考えを70語程度の英語で答えなさい。
【2016年度東京大学前期】
右の絵に描かれた状況を簡単に説明した上で,それについて
あなたが思ったことを述べよ。全体で60~80語の英語で答えよ。
といった出題があり,どれも受験生の「英語力以外の資質」も試されていることがおわかりいただけることでしょう。大阪大学の問題は,人工知能(AI)が進化して人間の仕事を奪っていくと言われる時代が目の前に来ていることを前提として,あえて「知識とは?」と問いかけている点で,英語力のみならずトータルな教養や問題意識が求められています。東京大学の問題は,状況説明はできても自分の思いを英語で述べるのは,大変難しかっただろうと思います。
今回紹介した大学入試の自由英作文には,中学3年であってもあるいは小学生であっても「日本語であれば」述べることができるという共通点があります。日本語で考えをまとめ述べることができなければ,いくら英語の学習履歴を増やそうともこうした出題に対応することはできませんから,小学生~中学生にかけての思考履歴の差が大変重い意味を持っていることがわかります。
それを踏まえて「学校選択問題」を見てみれば,出題者が中学3年生に求めるものを強烈なメッセージとして発信していることが見えてきます。英語の試験とはいいながら「一般教養」「背景知識」「異文化理解」といった領域まで問える設定になるであろうこと,2020年以降の大学入試改革で一気に加速するであろう「「事前に決められた正解のない問題」に慣れておいてほしいということ・・・。
高校入試・大学入試を問わず,これまでの日本が量産してきた「暗記型の秀才」では対応できない能力が求められてきますが,旧態依然の仕組みの中では鍛えられる見通しが立ちません。御家庭での会話も含めて,保護者にとってはお子様が学ぶ環境作りをどうやってコーディネートするかも大きなテーマとなることでしょう。
教育クリエイター 秋田洋和
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