トップページ ≫ 文芸広場 ≫ 便利さがサバイバル能力を奪う?!~映画『サバイバルファミリー』
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このところ観たい映画が目白押し!理由はラジオである。ラジオには映画監督が出演して自作の映画を語ったり、映画評論家がおすすめ映画についてしゃべるコーナーがある。それを聴くとすっごく映画を観たくなるのだ。
この映画もそのなかのひとつ。映画『サバイバルファミリー』を作った矢口監督がラジオにゲスト出演していて、映画の裏話をしていた。矢口監督はあの『ウォーターボーイズ』を撮った監督だ。久し振りの新作『サバイバルファミリー』は、着想は15~6年前まで遡るそうで、パソコン等が普及してきた頃に、機械音痴の監督が「いっそ全部なくなればいいのに」と思ったのが始まりとか。
映画では、突如、全ての電力が止まり、電灯もつかず、交通機関も動かず、情報も遮断されるという状況を描いている。鈴木一家は、水と食料を求めて祖父が住む鹿児島を目指し、自転車で出発するのだ。途中、バッテリーの補充液を水の替わりに飲んだり、猫用の缶詰を食べたりして移動を続ける。ちなみに、監督はスタッフと共に、実際に鈴木一家がたどるであろうコースを車で走ってみて、バッテリー補充液なども飲んでみて体調を崩さなかったものを映画の中で採用しているとか。
また、興味深かったのが、映画のためのリサーチとして複数人にアンケートをとった時の話だ。電気が止まったら、あなたはどうしますか?という問いに答えてもらう形式なのだが、アンケートは次の質問が見えなくなっていて、質問に答え終えたら、次の質問を見るという形になっている。ラジオで聴いた話で、少し違っているかもしれないが、「電気が止まったその日にあなたはどうしているか」から始まって、3日後、1週間後、1ヶ月後・・・というようにだんだん期間が長くなっていった時に、どう感じるかを想像して記入してもらう内容になっている。
そうすると、年代によって、ある傾向があるそうだ。若い人は、早い時期に「もう死ぬのを待つ」というようなことを書くのだが、高齢の方は、釣りをして魚を捕って食べる等とどうにかして生きようとする意志を書いているようだ。若者は、便利な生活に慣れてしまって、サバイバル能力が薄いようだ。便利さが生きる能力を奪うなら、そんな便利はいらないのでは?とも感じてしまう。ま、魚も上手にさばけないわたしが言えることでもないが。
映画は、時に笑いながらも、鈴木一家とサバイバル生活を行った気になって、観終わった後にはぐったりとくたびれた。一家が、サバイバルしながら、絆を深めていく様子にはこころ打たれた。
映画帰りは、非電力の移動手段である自転車がいつもより貴重に思えて、「自転車さん、いつもどうもありがとう」と頭の中でつぶやいた。
この映画を観る以前と以後では、自分のなかの何かが変わったことは間違いない。
檀 ままこ
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