社会
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ポカポカ陽気の到来で、閉め切っていたガラス戸を開けると、春風とともに入ってきたのはきついタバコの臭いだった。マンションではベランダで喫煙すると隣や階上の部屋に煙が流れる。
受動喫煙ということが大きな社会問題になっている。タバコは吸う人だけでなく、近くにいて煙を吸ってしまう人の健康まで害してしまうからだ。日本では受動喫煙により肺がんと心筋梗塞で年間6800人が亡くなっている。ほかにも虚血性疾患、副鼻腔がん、小児の呼吸器系の病気や中耳炎、妊婦の子宮への悪影響から新生児や幼児の異常などがあげられる。
タバコの煙は喫煙者が吸い込む主流煙と火の先からの副流煙があるが、副流煙はアルカリ性が強く、目や鼻を強く刺激する。こちらのほうが一酸化炭素など有害物質を多く含むという。病気にならないまでも、受動喫煙により不快感が募り、ストレスが増加する。
それでも共同住宅での隣人関係を配慮して、なかなかクレームをつけにくいのも事実だ。管理規約でベランダでの喫煙が定められていればよいのだが、特に規定がないマンションのほうが多い。通路や階段などの供用部分では禁煙が普通だが、ベランダは専用使用権付き共用部分ということでグレーゾーンになっているのだ。あえて裁判に持ち込み、ベランダ喫煙者から慰謝料を勝ち取った例があるが、そこまでやるにはたいへんな労力を要する。
こういうこともあって、最近はベランダでの喫煙、さらには全面的禁煙をうたった新築マンションが増えている。その規定がない既存マンションでもベランダ喫煙禁止の流れはさけられないだろう。管理規約の改正なら4分の3以上の賛成が必要だが、使用細則・規定での改正なら過半数の賛成で決められる。
その後押しとなりそうなのが、2020年東京五輪・パラリンピック開催にむけての健康増進法改正案など受動喫煙対策への取り組みだ。自民党のたばこ議員連盟が猛反発しているが、世界保健機関(WHO)による受動喫煙対策の4段階のランク付けでは日本は最低水準だから、このままではすまないだろう。たばこ議員連盟は飲食店内での全面禁煙に抵抗しているが、マンションでは室内禁煙よりベランダ禁煙のほうが優先事項だ。自分の部屋で吸うと室内の空気が汚れるからベランダで吸うというのは通らない理屈だ。
パイプでの喫煙を愛した昔の英国紳士たちは、外でプカプカやるのは無作法だとして、わざわざスモーキング・ルームを作ったという。髪や衣服に臭いが移るのを恐れ、スモーキング用のキャップとジャケットを着用した。見習いたいマナーだ。
山田 洋
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