トップページ ≫ 社会 ≫ 『北斗の拳』作者による大脱線自衛隊漫画
社会
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『北斗の拳』や『ドーベルマン刑事』など大ヒット漫画の原作者である武論尊さん(70歳)が、出身地の長野県佐久市に4億円を寄付する。市は大学進学をめざす地元の若者に給付型奨学金を給付。来年度から10年間、毎年10人ずつ、1人年間100万円を4年間提供するのだ。同時に漫画家や漫画原作者を志す人を対象に「武論尊100時間漫画塾」を開講する。受講料は無料、定員は30人で市内在住者優先。こちらも費用は武論尊さんが負担する。
数々のヒット作の印税で資金は豊富なはずだが、なかなかできることではない。本人は「自分も家が貧しく、中学を出て自衛隊に入った。高校に入っていたら別の人生があったと思う」と語っている。
武論尊というペンネームは、かつて日本でも人気のあったハリウッドスター、チャールズ・ブロンソンと似ている(本人談)から付けられたというが、もう1つ、史村翔というペンネームも持つ。当初、武論尊は集英社刊の作品用で、他社刊のものは史村翔だった。後者では『北斗の拳』ほどのメガヒットはなくても、コメディーやヒューマンドラマなど幅広いジャンルに傑作を生んできた。
素顔の本人は映画のブロンソンより人懐こい風貌だ。会合で同席したことがあるが、場をなごませるために常に気遣いしていた。史村名での作品で特に私の記憶に残っているのは、7年間の自衛隊生活を下敷きにしたと思われる『右向け左!』(画・すぎむらしんいち 週刊ヤングマガジン1989年8号~1991年25号)だった。
凶暴な先輩が金稼ぎのために自衛隊に入っていた留守に、その彼女に手を出した無節操な主人公は、その償いに300万円を作らなければならなくなり、先輩に代わって自衛隊に入る。「ここにいれば2年で300万たまる!」と言われたからだが、毎月の収入はすべて先輩に行ってしまう。最後はキレた主人公が暴走、戦車も出動し、実弾飛び交う大騒動になる。登場する隊員たちも変な奴ばかりで、自衛隊にとってはうとましい漫画だろうと思った。
作品は単行本化されていて、最新リニューアル版では巻末におまけマンガ『防衛庁の熱い日』が付け加えられていた。この中で当時の防衛庁幹部が『右向け左!』を見て「自衛官はバカでスケベばかりみたいだ」と激怒すると、広報官が「自衛隊の広報予算は少ないが、大部
数の漫画誌に自衛隊が紹介されれば、宣伝費換算で広報予算と桁違いの額になる」と説得する。フィクションと断りが入っているが、当時の自衛隊の認知度の低さからすれば「そうかあ」と思えてしまう。
驚いたことに、1995年にこの漫画が劇場版映画になり、防衛庁と自衛隊が全面協力したのだ。漫画どおりのストーリーなら、何と心の広い人たちというわけだが、漫画とはかなり違う展開になっていた。なにしろ、「新人自衛官たちが厳しい訓練と仲間との交流を通して成長していく様を描いたコメディー」と紹介されているのだから。ともあれ、南スーダンに派遣されるなんてことは考えられもしなかった、よき時代の自衛隊員物語だった。
山田 洋
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