トップページ ≫ 外交評論家 加瀬英明 論集 ≫ 人間にとって宗教の発生とは
外交評論家 加瀬英明 論集
どうして、人間だけが宗教を持っているのだろうか?
どうして、人間だけが宗教をつくりだしたのだろうか?なぜ、人だけが、自分の外にあるものを、拝むのだろうか?
人間だけが他の生物と違って、自然から分離されて、孤立している。
この世に生まれ落ちたのに、自然と一体になっていないために、底知れない深い不安に駆られたにちがいない。動物はそのように思い煩って、悩むことがない。
そのために、人間は世界のどこへ行っても、自分たちがこの世界とどのようにかかわっているのか、説明する神話を編みだした。
宗教は言語ほど、古いものであるにちがいない。
人は言語を使って、考えるようになった。人は言語なしには抽象的なことを、考える事ができない
人は動物のなかで、肉体的にか弱い存在だった。
歯も、爪も、野獣と戦うのには、まったく役に立たない。
人間は、人にもっとも近い存在である類人猿と較べてみても、石や、球をはるかに遠くまで投げる能力を備えている。
原始人は、貝や木の実を採集するかたわら、狩りを行うことによって糧を得た。
しかし、貧弱な歯や爪では、野獣と組み合って、戦うことができなかった。
飛翔体である槍をつくって、投擲するうちに、物を遠くまで投げる魅力を身につけたにちがいない。
石器時代の古墳や住居跡の遺跡から、投げ槍の先端についていた石刃が出土している。
人は走る速度も劣っていたから、投げることを学習した。野球の起源は、マンモスや野牛を狩猟したことに求められよう。
人は走る速度が遅かったが、汗腺を備えていて、汗をかくことができるから、長距離を走って獲物を追いつめることができた。マラソンの起源である。
おそらく、人は他の獣よりも。歯が劣っていたために、火を使うようになったのだろう。歯が貧弱だったから、固い食物を咀嚼するために、焼いて柔らかくした。
土器をつくるようになった後に、食物を茹でることができた。料理を生業としているシェフは人が弱々しい歯をもって生まれてきたことに、感謝せねばなるまい。
人は集団で狩りを行なった。そのためには言葉が必要だった。
全身が毛によって覆われていなかったら、愛情を表わしたり、相手の機嫌をとるために、言葉を必要とした。サル科の動物にとって毛繕いは、重要な社交である。もし人間の全身が毛によって覆われていたとしたら、言葉が発達しなかっただろう。
宗教は人が発祥したところから、人の一部だった。
宗教は人にとって、天性である。天性は生まれながらに備わっている性質だ。精霊を信仰することは、人に条件つけられたものだった。人は信仰から安心を得た。
今日では、神仏が存在しているはずがないという、無神論が流行っているが、無神論は、発生からせいぜい300年あまりにしかならない。ごく、短い歴史しかない。
どの民族をとっても、それぞれの神と、祖先から伝えられた神話をもっていた。
人は非力であるから、超自然的な力に憧れた。神話の登場する神々は、人になぞらえてつくられた神格であるが、超能力を備えている。
今日でも、コミックには、超人的な力をもった主人公が登場する。
セレブになった歌手や、スポーツ選手を、超人的な存在として崇める。神格があたえられているようだ。超人的な力に憧れるのは、私たちが原始人の心を、いまだに宿していることを示している。
人は超自然的な力が存在することを信じることによって、励まされる。人は太鼓の昔から、非力であることを知っていたから、たえず不安に苛まれてきた。
人は肉体的に劣っていたために、超自然的な力に、縋らなければならなかった。21世紀に入っても神仏による「加護」という言葉が、身近にある。
人は神の力を借りて、護ってもらうために祈った。いまでは宗教と言う翻訳語が定着するようになっているから、ここでは精霊信仰も、宗教の中に含めよう。
音楽や、舞踏や、絵画や、祭も、人も天性である。宗教と同じほどに、古いものであるにちがいない。
人は超自然的な力を、招き寄せることによって、不安を癒した。
音楽や、舞踏や、絵画を描くことや、しばらく後になって寸劇が演じられるようになるが、すべて神の機嫌を取り結ぶために、神に奉納する神事だった。祭には、音楽と舞踏が欠かせない。
人は集まって、人々と一体になることによって、安堵する。原始時代から、天性として群れに属したいという、強い欲求があるのだ。
新年に初詣での人混みのなかに身を置いたり、満員の野球場や、サッカーのスタジアムや、ロックバンドのコンサートで、熱狂する群衆の一部となって昂奮を分かちあうと、心が癒される。
太鼓の時代から、宗教も同じような必要を充たしてきた。大伽藍で、多くの同じ信者といっしょに祈祷すると、日頃の心の緊張が解きほぐされる。
今日、地球人口が70億人までになったが、圧倒的に大多数の人々が、宗教を信じている。人は天性を捨てることが、できない。
南アメリカのアマゾン流域や、パプア・ニューギニアや、ポリネシア、メラネシアの太平洋部族や、オーストラリアの原住民も、みな、それぞれ祖先から受け継いだ神話をもっている。
どの民族や、部族の神話をとっても、この世界がどのようにして生まれたんのか、人がどのようにして保存するようになったのか、説明している。
ジョン・レノンはなぜ神道に惹かれたか 四章 日本神話の独特な世界
バックナンバー
新着ニュース
- エルメスの跡地はグッチ(2024年11月20日)
- 第31回さいたま太鼓エキスパート2024(2024年11月03日)
- 秋刀魚苦いかしょっぱいか(2024年11月08日)
- 突然の閉店に驚きの声 スイートバジル(2024年11月19日)
- すぐに遂落した玉木さんの質(2024年11月14日)
特別企画PR