トップページ ≫ 外交評論家 加瀬英明 論集 ≫ なぜ日本の最高神は女性なのか
外交評論家 加瀬英明 論集
日本神話は日本民族のものであって、優しいという大きな特徴がある。神話は、民族の姿を映す鏡である。神話が編まれた時代から、日本人のかぎりない優しさが、表われている。
日本神話では、なぜか、女神のアマデウス(天照)大御神が、最高神である。至上神が女であるのは、他の主要な文明の神話に見られないものだ。
男は従うものに厳しい規律を課すが、女は優しく守ってくれる。
中国の最高神である天帝は、男だ。朝鮮の檀君神話の至上神は上帝桓因であるが、やはり男性神である。
ギリシャ神話では、男性神のゼウスが最高神である。ローマ神話のユピテルも男であって、ゼウスと同じように雷を武器として、高天から世界を支配する。
北欧神話の主神であるオーディンも、男性神である。風がことさらに強い地域だから、オーディンは風の神である、「吹く」という意味だ。神話も、民芸品なのだ。
古代エジプトの最高神のラ―も、男性神であって、太陽神である。頭部は鷹で、頭上に日輪を戴いている。バビロニア神話と、ペルシア神話のそれぞれ主神であるマルドゥクと、アフラ・マズダ―も男性神である。
アマテラス大御神の弟神のスサノオノ(素戔鳴)命が酔って、大御神が高天原で丹精してつくった稲田である営田をめちゃくちゃに壊し、そのうえ神聖で、清浄な宮殿に、大便と尿をして、汚してしまう。だが、アマテラス大御神は、「屎なすは、酔いて吐き散ら」したのだからといって、ゆるした。
それでも、スサノウノ命は改悛することがなかった。
大御神が祭りのために、衣服を織らせていた服屋の屋根に穴をあけて、こともあろうに、皮を剝ぎ、血みどろの野馬の死体を投げ込んだ。アマテラス大御神は弟神を罰することなく、天岩屋戸のなかに閉じこもって、姿を隠してしまった。
ギリシャ神話をはじめとする他の神話は、酷くて、残酷きわまりない。
ゼウスは神の1人であるプロメテウスが、天井から火を盗んで、人間に与えたために、罰としてコーカサスの岩山の頂きにはりつける。そして大きな翼をもつ鷲を送って、腹を割かせて、内蔵を食い散らかせた。
それも、毎日である。プロメテウスは不死であるから、鷲が日没とともにねぐらへ帰ると、体が回復してしまうために、耐えられない苦痛を味わった。
北欧神話も、聞くに耐えないような、血腥い物語りによって、彩られている。
神話は作り話だといって、斥けてしまってはなるまい。
神話は古代人が、世界観を述べた物語である。古代人は幻想的であるからこそ、それが真実だと思って、神話を伝えたのだった。神話には、それぞれの民族のありかたと、性格が表れている。
ジョン・レノンはなぜ神道に惹かれたか 四章 日本神話の独特な世界
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