トップページ ≫ 外交評論家 加瀬英明 論集 ≫ 『古事記』に描かれた世界の創世物語
外交評論家 加瀬英明 論集
日本神話にも、世界の創世物語りがある。
『古事記』はこう述べている。
「天地の初発の時、高天原になりすませる神の名は、天之御中主神、次に高御産巣日神、次に神産巣日神、此の三柱の神は 並独神成り坐して、身を隠したまひき」
アメノミナカヌシノ(天之御中主)神が、最初の神である。
神が天地をつくったのではなく、すでに天地があった。そこに、神が「成りま」せるというと、生成したのだった。
ユダヤ・キリスト・イスラム教では、全能の神が宇宙をつくった。人は絶対神が造った、被造物である。
それに対して、私たち日本人にとっては、神も、人も、生まれてきた。日本では、人が神によって造られたという発想がない。
祖先の力によって、親が産んでくれたのだから、生成したのである。人は被産物であって、被造物ではない。祖先のお蔭を蒙って、生まれたと、考える。
アメノミナカヌシノ神、タカミムスビノ(高御産巣日)神、カミムスビノ(神皇産霊)の三神の神の次に、二柱の神、さらに二柱の神が登場する。そして、はじめて八柱四組の男女のつれあいがいる対偶神が生成する。神々は生まれては、消えていった。
その次に、イザナギノ(伊邪那岐)命のイザナミノ(伊邪那美)命の二柱の男女の神が現れる。
神道には、全能の神も、絶対神もいない。それぞれの神が役割を分担している。民主的である。それに対して一神教は、独裁政治の萌芽を孕んでいる。
イザナギ、イザナミの男女の二神が出会い、恋におちて、夫婦となって、日本の国土と、アマテラス大御神をはじめとする、山川草木の諸神が生まれた。アマテラス大御神は、「天下の主」として生まれている。
私は結婚披露宴で、どうしても挨拶をしなければならない時には、イザナギ、イザナミの男女の二神が恋をして、結ばれたことによって日本が誕生したという話を紹介して、二人の男女が契るたびに、新しい日本が生まれると話すことにしてきた。
日本神話によれば、イザナギ、イザナミの二神が出会った時に、「あなにやし(ほんとに、まあ)、えをとこを(言い男を)」「あなにやし、えおとめを(いい女を)」という言葉を、交わした。一目惚れである。イザナギ、イザナミという名は、男女の神が「誘いあう」のが語源だとも、磯凪と磯波だとも、いわれる。
二神が交わって、イザナミが孕み、次々と日本の島々が生まれていった。
海の神と、波の海洋神である。日本人は海原の民なのだ。風と波が戯れているうちに、恋におちた。
ジョン・レノンはなぜ神道に惹かれたか 四章 日本神話の独特な世界
バックナンバー
新着ニュース
- エルメスの跡地はグッチ(2024年11月20日)
- 第31回さいたま太鼓エキスパート2024(2024年11月03日)
- 秋刀魚苦いかしょっぱいか(2024年11月08日)
- 突然の閉店に驚きの声 スイートバジル(2024年11月19日)
- すぐに遂落した玉木さんの質(2024年11月14日)
特別企画PR