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外交評論家 加瀬英明 論集
私の家には、カトリック(キリスト旧教)の司教や、チベットの僧をはじめ、さまざまな宗教者が、寄ってくれる。
キリスト教徒にとっては、聖母マリアの精霊による処女受胎と、イエスの死後の復活と昇天は、信仰の基盤であって、動かすことができない事実である。キリスト信者であれば疑ってはならない。
私はインドを訪れるたびに、ガネーシアの像や、絵を求めて、蒐集してきた。木製の新しいものや、金属製の大小の像や、インドの骨董屋が何百年もたっているといった、古びたものもある。
ガーネシアは象の頭をして、4本の手を持ち、出っ腹をしている、知恵と学問、商売繁昌の神である。しばしば足元に鼠を連れている。
ガーネシアが踊っている像も、多い。インドは世界で毎年、最も多くの映画を制作している国だ。インド映画には、男女や、群衆が総出で踊る場面が、多い。
ガーネシアはインドで、ひろく信仰されているが、人と宇宙の運命を支配する神であるシバと、その妻の女神の息子である。
バールブァティーは美貌であり、百本の腕を持っている。
シバが子をつくることを望まなかったから、バールブァーティーは処女だった。
ある日、ブァールバーティーが入浴しようとして、裸になって浴室に入った。そして、誰も入って来ないように、身体を洗う糠から男の子の人形をつくって息を吹き込むと、人形が生命を得て、ガーネシアが一人息子として生まれた。
バールブァーティーはガーネシアに、絶対に誰も風呂場に入れないように、いいつけた。
すると、ほどなく、シバが森から戻ってきた。ガーネシアは母である神姫の命令を守って、シバを通さなかった。
シバは怒って、矛おとると、ガーネシアの首をはねてしまった。
バールブァーティーは、ガーネシアの死体を見ると、悲嘆にくれて、シバにガーネシアを甦らせるように、要求した。
しかし、シバが力一杯首をはねたために、頭が遠く飛んでしまって、どこへ行ったのか、分からなかった。
シバは途方にくれて、男神ブラフマーに援けを求めた。ブラフマーは、シバに道で頭を北に向けた動物を見つけて、その頭を持って帰るようにいった。
シバは国中の道を走りまわって捜した。すると、一頭の像が死に瀕して、頭を北に向けているところに、行きあった。シバは像が息を引き取ると、すぐにその頭を切り取って、バールブァーティーのもとへ急いだ。その頭をつけると、ガーネシアが甦った。
インドで、私は人々がガーネシアの像に、花や、食物を供えて、香に火を点じて祈るのを見て、幸せな人々なのだと思った。
もちろん、マリアの処女受胎や、イエスの死後の甦りを信じている人々も、幸せだと思う。
私は、プロテスタントの牧師が家に遊びにきた時に、ガーネシアガーネシアの像を蒐集しているといって、いくつか見せてから、ガーネシアの話をした。
ところが、友達の牧師には、私はインド人がガーネシアを信仰しているのは、キリスト教信者がイエスの死後の復活の物語りを信じているのと変わりがないと、暗に伝えようとしているのが、分からなかった。
もちろん、私はそう口には出さなかった。牧師は目の前にあったガーネシアの像を、あきらかに偶像として手に取って、玩びながら、鼻を鳴らすように「はあ、ヒンズーの神話は、なかなか面白いものですね」と、いった。
しかし、もし私がマリアの処女受胎や、イエスの死後の復活について、「はあ、なかなか面白いものですね」といって、微笑んだとしたら、きっと強いふっ不興をかったにちがいなかった。
ジョン・レノンはなぜ神道に惹かれたか 四章 日本神話の独特な世界
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