トップページ ≫ 外交評論家 加瀬英明 論集 ≫ 残酷な物語にあふれた旧約聖書
外交評論家 加瀬英明 論集
私は進学校として有名な、カトリック教団が経営している、E学園の中学部に通った。通ったというよりは、通わされたというほうが、正しかったろう。
ドイツ人の神父が、校長と、副校長を務めており、カトリックの神職者だけあって、独善的だった。預かった少年たちを、ただ厳格に扱えばよいと考えていた。
私は窒息しそうになったので、中学が終わる前に親にいって、ふつうの高校に転校した。学園側も、私が事あるごとに反抗したから、純白に表れた羊の群れから、灰色の羊がいなくなって、喜んだはずだった。
それでも、一つだけよいことがあった。聖書のクラスがあって、聖書に親しむことができたことだった。
聖書のクラスでは、ドイツ人の神父が聖書を講じた。私は神父が聖書の中から取りだして教える箇所よりも、家で読んで、疑問に思ったところについて、質問した。
「創世記」のはじめのほうに、「エデンの園」がどのようなところか、描かれていた。
「エデンから一つの川が流れ出ていた。園を潤し、そこで分かれて、四つの川となっていた。第1の川の名前はピションで、 金を産出するハビラ地方全域を巡っていた。
その金は良質であり、そこではまた、琥珀の類やラピス・ラズリモも産出した。(「創世記」2-10~12)
私にはラピス・ラズリが、どれほど高価な石なのか、分かるはずがなかったが、神父に「エデンの園では、アダムとイブは裸でした。いったい、金や宝石を、何に使ったのでしょうか?」と、たずねた。
すると、神父は不機嫌な声になって、「そのようなことは、いま、君たちが考える必要はありません」といって、叱責された。
この学園について、もう一つ、よいことがあったとすれば、権威を疑うことを身につけたことだった。
私は神父を困らせるのを、楽しみにするようになった。その後、また質問したために、聖書のクラスから放免された。
私は聖書に恐ろしい話ばかりでてくるので、戦いた。
旧約聖書は、これでもか、これでもかというほど、血腥い、残酷な物語りにあふれている。
聖書は、中東の青銅器時代について、秀でた記録となっているが、とても宗教書だとは思えない記述にあふれている。
「ネゲブに住むカナン人、アラブの王は、イスラエルがアタリムの道を進んで来ると聞き、イスラエルと戦い、捕虜を引いて 行った。イスラエルは王に誓いを立てて、『この民をわたしの手に渡してくださるならば、必ず彼らの町を全滅させます』と言っ た。主はイスラエルの言葉を聞き入れ、カンナ人を渡された。
イスラエルは彼らとその町々を全滅させ、そこの名をホルマ(全滅)と呼んだ(「民数記」21-1~3)
「モーセは、戦いをおえて帰還した軍の指揮官たち、千人隊長、百人隊長に向かって怒り、彼らにこう言った。
『女たちを皆、生かしておいたのか。(略)直ちに、子どもたちのうち、男の子は皆、殺せ。男と寝て男を知っている女も皆、殺せ。女のうち、まだ男と寝ず、男を知らない娘は、あなたたちのために生かしておくがよい』(同31-14~18)
「我々の神、主が彼を我々に渡されたので、我々はシホンとその子らを含む全軍を撃ち破った。我々は町を一つ残らず占領し、町全体、男も女も子供も滅ぼし尽くして一人も残らず、家畜だけを略奪した」(「申命記」22-33~35)
「『行け、アマレクを討ち、アマレクに属するものは一切、滅ぼし尽くせ。
男も女も、子供も乳飲み子も、牛も羊も、らくだもろばも打ち殺せ。容赦してはならない』
(「エルサレム記」上15-3)
次の記述は、敵の赤ん坊を岩にたたきつけて、殺せと命じている。
「いかに幸いなことか
お前がわたしたちにした仕打ちを
お前に仕返す者
お前の幼子を捕えて岩にたたきつける者は」 (「詩編」137-8,9)
「もしその娘に処女の証拠がなかったという非難が確かであるならば、娘を父親の戸口に引き出し、町の人たちは彼女を石で打ち殺されねばならない」
(「申命記」22-20~21)
結婚した娘が、もし処女でなかったとすれば、町全員が、女が死ぬまで石を投げつけ
る。石打ちの刑によって、殺さねばならないのだ。
ジョン・レノンはなぜ神道に惹かれたか 五章 エルサレムで考えたこと
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