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外交評論家 加瀬英明 論集
イスラム教の『コーラン』も、旧約聖書と同じように、私たちが読むと、残酷だと思える記述が、多い。
「それから泥棒をした者は、男でも女でも容赦なく両手を切り落としてしまえ。それもみな自分で稼いだ報い。アッラーが見せしめのために懲らしめ給うのじゃ」
(五-43)
真正のイスラム国家は、シャリアー(宗教法)に従って、治めなければならない。
今日でも、サウジアラビア、イラン、スーダンにおいて、石打ちの刑が行われている。
アフガニスタンが、イスラム原理主義のタリバン政権のもとにあった時も、シャリアー通りの政治がしいられていた。
『コーラン』は、「読誦」という意味である。モハメッドが語ったことを、開祖の死後しばらくたってから、話し言葉によって書かれた。イスラムは「絶対的な帰依」という意味である。
イスラム教は、ユダヤ教徒キリスト教をもとにしているから、『コーラン』は、アブラハムをイブラーヒ―ム、モーセをムーサー、ノアをヌーフ、マリアをマリアム、イエスをイーサー、サタン(悪魔)をシャイターン、大天使ガブリエルをジブリール、ダビデをダーウド、ゴリアをジャルート、イスラエルをイスらーイルというように、旧・新約聖書の人物や、神霊や、悪霊、地名が登場する。
『コーラン』は、イーサー(イエス)をアラーの言葉を預かった預言者として、敬っているものの、アラーの子であることを、否定している。
『魏志倭人伝』を著した中国の史家は、当時、倭国とよんでいた日本について、「風俗は乱れていない。盗みがなく、争い事も少ない。」と記している。」
当時の三世紀の中国は、魏、呉、蜀の三国が鼎立して争っていた。三国時代と呼ばれる。
日本では女性が貞操をよく守り、盗むことがなく、めったに争うことがないと、感心している。当時の中国では、風俗が乱れ、盗み、争いが、絶えなかったにちがいない。
私は日中親善を、強く願っている。あれから一七〇〇年たって、風俗が正され、盗み、横領がかげをひそめ、規律がよく守られるようになったことを、願いたい。
私は中学校のおかげで、聖書に関心をいだくようになったことから、聖書をつねにわきに置いてきた。
だから、イスラエルをはじめて訪れた時には、胸がおどった。
イスラエルの外務省が、歓迎のパーティーを催してくれた。
歓迎会の席上で、挨拶しなければならなかった。政府の高官や、夫人たちが、出席していた。
私は「長く聖書に親しんできましたが、お国にきて、聖書の『恋歌』のなかの『あなたの髪は丘を懸け降りる黒羊の群れのように、美しい。あなたの歯は洗いたての羊のように、白く輝いている』という一節を、この眼で見て、感動しました」と、いった。
すると、夫人の1人から、「日本でも美しい黒髪や、白い歯を動物にたとえますか」と、質問された。
「黒髪は射干玉(ぬばたま)のようだといいます。黒いリトルクックー(ホトトギス)を、射干玉鳥と呼びます。でも、歯については、月が明るく輝いているような、皓歯という表現はあっても、動物は思いつきません。
日本では皆さんの美しい指を、『白魚のような』といって、ほめますね」
そう答えたら、私を囲んだ夫人たちが、揃って顔を歪めた。ぬめぬめした魚を、想像したにちがいなかった。
私はいかに異文化交流が難しいものか、あらためて知らされた。
ジョン・レノンはなぜ神道に惹かれたか 五章 エルサレムで考えたこと
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