社会
特に埼玉県、さいたま市の政治、経済などはじめ社会全般の出来事を迅速かつ分かりやすく提供。
月末に保守系論調で知られる2つの月刊誌が新聞に広告を掲載するが、驚いたことに両方とも内容や体裁がそっくりだ。地味な広告だったら気が付かないのだが、両誌とも記事のタイトルがかなり攻撃的でヘイトスピーチまがいのもあるので、いやでも目につく。朝日新聞など国内メディアや中国、韓国、北朝鮮をたたくことに注力し、最近では安倍首相擁護に躍起になっている。
それはワック・マガジンズの「WiLL」と飛鳥新社の「月刊Hanada」だが、酷似しているのにはわけがある。「WiLL」は2004年11月に創刊され、その時から編集長の座にあった花田紀凱氏が鈴木隆一社長と対立し、2016年3月に退職、編集スタッフを連れて飛鳥新社に移籍し、「月刊Hanada」を創刊したのだ。中身だけでなく表紙のレイアウトや配色までそっくりで、当然、先発の「WiLL」側からクレームがついたが、花田氏は、「WiLL」の表紙デザインを考案したのは自分だったと突っぱねている。
花田氏はかつて「週刊文春」編集長として辣腕をふるい、1994年に月刊「マルコポーロ」編集長に転任したが、ナチスのユダヤ人大量虐殺のガス室を否定する記事が問題となり、休刊(実際には廃刊と同じ。以下同)となった。その後、朝日新聞社に移り、女性誌「uno!」を創刊するが、数年後に休刊。次は角川書店に移り、苦戦していた「メンズウォーカー」の編集長になるが、この雑誌でも休刊の憂き目を見る。さらに「宣伝会議」を経てワックに入った。ここの鈴木社長は新潮社出身だが、もともとは月刊「文藝春秋」で花田氏のチームの一員だった。立場が社長と編集長に変わったとはいえ、1942年生まれの花田氏のほうが年上で、鈴木氏は「花田さんは私のストレスだ」と言っていたそうだ。
けんか別れしてウリ2つの雑誌ができたわけだが、市場規模からも両立は無理と見られていた。ところが、他の保守系雑誌ともどもまだ存続しているのだから、この類の雑誌の読者は意外に多いのかもしれない。品は良くないものの、強い調子で決めつけるような記事やタイトルがコアな読者には受けるのだろう。
ところで、少し前から両誌の執筆陣に旧知の女性が加わった。20年以上前、旅行雑誌編集者だった彼女とは会合などでよく会ったが、政治的な話題は出なかったし、その方面に関心があるとは思えなかった。退社後、中国茶の研究で実績を上げ、著書も出したと聞いていたから、彼女が中国批判を繰り返しているのにはびっくり。お茶の取材で何回も中国に行って、逆に嫌中派になったのか。さらには朝日新聞攻撃や安倍首相擁護の論陣にも加わり、首相インタビューもやっている。保守陣営の女性論客としては櫻井よしこ、金美齢両氏がよく知られるが、新しい顔ぶれも必要なはずだ。彼女の文章を読むと、編集側の意向を汲んで書いているのがわかる。編集部としては重宝な存在だろう。
現在発売中の号でも両誌は相変わらずの論調を続けている。しかし、内外の政治情勢、経済情勢は流動的で先行きは混沌としている。あまり硬直的な主張ばかりだと、変化に対応できず、墓穴を掘ることになりかねない
山田 洋
バックナンバー
新着ニュース
- 島耕作、50年目の慶事が台無しに(2024年11月24日)
- 第31回さいたま太鼓エキスパート2024(2024年11月03日)
- 突然の閉店に驚きの声 スイートバジル(2024年11月19日)
- すぐに遂落した玉木さんの質(2024年11月14日)
特別企画PR