トップページ ≫ 外交評論家 加瀬英明 論集 ≫ ユダヤ教の煩雑きわまりない食物規定
外交評論家 加瀬英明 論集
キリスト教はいつ、ユダヤ教とはっきりと袂を分かったのだろうか。 ユダヤ教の食物についての戒律は、仔細にわたって、煩雑きわまりないものだ。
神が汚れたものとみなしたものは、いっさい食べてはならない。
「主はモーセとアロンにこう仰せになった。イスラエルの民に告げてこう言いなさい。
地上のあらゆる動物のうちで、あなたたちの食べてよい生き物は、ひづめが分かれ、完全に割れており、しかも反すうするものである。従って反すうするだけか、あるいは、ひづめが分かれただけの生き物は、食べてはならない。
らくだは反すうするが、ひづめが分かれてないから、汚れたものである。
岩狸は反すうするが、ひづめが分かれていないから、汚れたものである。
野兎も反すうするが、ひづめが分かれていないから、汚れたものである。
いのししはひづめが分かれ、完全に割れているが、まったく反すうしないから、汚れたものである。
これらの動物の肉を食べてはならない。
死骸に触れてはならない。これは汚れたものである。
水中の魚類のうち、ひれ、うろこのあるものは、海のものでも、川のものでもすべて食べてよい。しかし、ひれやうろこのないものは、海のものでも、川のものでも、水に群がるものでも、水の中の生き物はすべて汚らわしいものである。
これらは、汚らわしいものであり、その肉を食べてはならない。死骸は汚らわしいものとして扱え。
水の中にいて、ひれやうろこのないものは、すべて汚らわしいものである。
鳥類のうちで、次のものは汚らわしいものとして扱え。食べてはならない。それらは汚らわしいものである。禿鷲、ひげ鷲、黒禿鷲、鳶、隼の類、鳥の類、鷲みみずく、小みみずく、虎ふずく、鷹の類、森ふくろう、魚みみずく、大このはずく、小きんめふくろう、このはずく、みさご、こうのとり、青鷺の類、やつがしら鳥、こうもり。
羽があり、4本の足で動き、群れを成す昆虫はすべて汚らわしいものである。
ただし羽があり、4本の足で動き、群れをなすもののうちで、地面を飛躍するのに適した後ろ肢を持つものは食べてよい。すなわち、いなごの類、羽がないいなごの類、大いなごの類、小さな類は食べてよい」(「レビ記」11―1~22)
聖書は、食べてはならないものについて、細かい規定をまだ長文にわたって、記している。
そこへゆくと、神道には食物について、禁忌がいっさいない。
たちの先人が、動物の肉を食することを忌避したのは、仏教の影響である。
遣隋使も、遣唐使も、羊も豚も、船に乗せて、連れて帰ることがなかった。美という漢字は「羊」と「大」を組み合わせている。大きな羊がまるまると肥えて、唾液線を刺激して、見るからにおいしそうだから、美しいのだ。
十二支は、中国から伝わったが、中国、朝鮮には「豕」年がある。日本には豚がいなかったので、猪をあてた。
キリスト教は、その教えを非ユダヤ社会にひろめてゆく過程で、ユダヤ教離れした。ユダヤ教の重要な教えである食の戒律について、はっきりとした改変を行なっているのだ。
「わたし(ペトロ)がヤッファの町にいって祈っていると、我を忘れたようになって幻を見ました。大きな布のような入れ物が、四隅でつるされて、天から私のところまで下りて来たのです。
その中をよく見ると、地上の獣、野獣、這うもの、空の鳥などが入っていました。
そして,『ペトロよ、身を起こし、屠って食べなさい』いう声を聞きましたが、わたしは言いました。『主よ、とんでもないことです。清くない物、汚れた物は口にしたことがありません。』
すると、『神が清めた物を、清くないなどと、あなたは言ってはならない』と、再び天から声が返って来ました。
こういう事が三度あって、また全部の物が天に引き上げられてしまいました」 (「使徒言口論」11―5~10)
聖ペテロは、イエスの十二使徒の中の1人であり、イエスによって「ペトロス」(岩)と名づけられた。
ユダヤ教の食物の戒律を捨てなければ、キリスト教を非キリスト教徒であった異邦人にひろめるに当たって、大きな障害となった。そのため、主なる神は、気分をお変えになって、食物について人にお下しになった、あれほどまで厳しい戒律を変えてしまったのだ。
ジョン・レノンはなぜ神道に惹かれたか 第6章 世界宗教と神道はどこが違う
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