文芸広場
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いっぴきの狐がボンヤリと遠い空の彼方をみている
狐は知っているのだ
ほんとうの空はみな虚空だということを
狐のまわりはすすきが銀色の波をうっている
このすすきの丘はもう何千年もの昔からあきもせず
同じ風景を彩り造ってきた
狐もまた何千年もの昔から
この丘に立ちすくんでいると思っていた
それにしても仲間はみなどこかへいなくなって誰ひとり姿はなかった
ただ空も丘も変わらないだけだ
この変わらぬ丘を人々はいつのまにか「孤丘」と呼んでいた
ある時狐は知らぬ間に銀髪の老人となった
そして「孤丘」という茶店の亭主となっていた
みんな昔のことはおとぎばなしです
亭主は口ぐせのように来る客々に語り続けていた
つくば林太郎
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