社会
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ガンで亡くなってから半月たった今も、テレビや新聞で樹木希林さんの名前を見ない日はないくらいだ。映画、テレビドラマ、CMでの独得の演技は誰にもおなじみだが、死後、あまり知られていない人物像が報じられ、あらためて人間としての奥行き、面白さを知らされる。
確か1974年のはずだが、男性週刊誌の編集部員だった私は、仕事で彼女に会ったことがある。所属していたグラビア班の会議では特集企画が払底し、以前の人気企画の焼き直しをすることになった。「ケチケチ生活大作戦」みたいな内容で、演技力のある役者を起用してケチの傑作アイデアを公開するのだ。「今度は悠木千帆(樹木さんの旧芸名)がいいね」ということになった。そして編集担当は私にお鉢が回ってきた。
このような生活臭のあるテーマは全く苦手だったので、何とかボツにしたいと思っていたら、悠木さんが出演承諾と伝えられ、逃げられなくなった。ケチの知恵を集めるため、人手も頼んで悪戦苦闘したが、実用的かつ現実的なアイデアは出てくるが、写真に撮って面白いものはなかなか集まらなかった。
撮影当日、自分でも不満足な撮影プランを持って、カメラマンたちとともに悠木さんを訪ねた。この時は夫の内田裕也さんとは別居する前で長女も誕生していなかった。マンションのロビーに付き人なしで現れた彼女は、頭髪の一部を脱色した老けメイクで、あまり年齢差がない私より一回り以上も年上に見えた。
こちらのプランを彼女に見せると、さっと目を通した後、「これでは面白いものができないですね」と言って、撮影の中止を提案した。彼女なら貧弱な台本でも面白く演じてくれるのではという淡い期待は吹っ飛んだ。
当時も超多忙の彼女の一日を無駄にしてしまって恐縮の極みだったが、そんなことは一言も言われなかった。今、思い出しても心おだやかではない。
山田洋
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