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コラム …男の珈琲タイム
樹木希林さんが天に召されて涯しなく遠い所へ行ってしまった。味のある名女優だった。この人の話術はほぼ名人に近かった。特に夫、内田裕也に対する表現は慈愛に満ちていて悲しかった。愛を慈しみという言葉で覆い隠していた。それにしても希林、裕也は不思議な夫婦だった。夫婦生活の9割以上別居だった。別れた方がいいと私は思っていたが、どうやら希林さんの方が裕也さんに惚れてしまっていたらしい。でも、やはり不思議だ。夫婦と呼んでいいのだろうか。裕也は別居中、勝手気ままな生活をし浮き名を流していた。にもかかわらず希林の死を知るや「愛していた・・・」と泣いた。何を言うや!裕也よ。愛という言葉ほど便利なものはないと思った。「愛しているよ」ではじまり、長い間は忘れていて「愛していた」で終るのが人生だとしたら、人生は砂漠だ。樹木希林。砂漠に緑を恋願っていた名前に見えて仕方ない。
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