トップページ ≫ 社会 ≫ 特別企画 ~水のスペシャリスト下村政裕からのメッセージ~⑮
社会
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ラオスでの水と生活(Water & Life in Laos)
~そこに水道の原点があった~
さて、水道の原点を、ラオスを通して見つめ直すために、その背景としてのラオス国の紹介にかなり時間を費やしましたが、今回から、また本論である水道に話を戻し、その原点についての議論から、再スタートさせます。
私が、1990年代に見たラオスの人たちの水と生活事情は、日本の都会育ちの私にとって、自分の子供時代よりはるかに前、歴史書等でしか知らない世界が広がっていました。浅井戸から少女がつるべで水を汲み、天秤棒にバケツで高床式の家まで運ぶ。その井戸の周りは家畜であふれ非衛生的であり、乾季には涸れてしまう井戸も数多くある。そんな状況だったのです。ラオス国の当時の水道の普及率は10%強でしたので、ラオスの国民の90%弱の人が、まさに上記のような水と生活をおくっていたということになります。
そしてその水と生活での一番大きな問題は、いわゆる水系伝染病。私自身も、1994年の6か月間の赴任時には、程度の差はありますが何度も定期的(1か月に1,2回程度)におなかを壊していたと記憶しています。そして特にひどかったのは地方出張先でのこと。物心ついてからそれまでに経験したことのないような激しい下痢、腹痛そして高熱に見舞われてしまいました。偶然、その時に地方の空港で出会った大使館付きの日本人の医師から、「多分、コレラだと思うが、ここで流行っているコレラは、体力のある日本人にとっては、命の別状はない。もしもビエンチャンの自宅に戻っても症状が回復しないようなら、大使館に連絡をくれ。」と。先生の言われる通りすぐに回復し事なきを得ましたが、特に乳幼児やお年寄りのラオス人にとって致命的な水系伝染病が、今もなお、時として猛威をふるっています。当時は地方のラオスの村の入り口には、風車が置いてありました。コレラ除けだとの説明を受けましたが、現在に至っても、そんな迷信的な話が、地方の村人の中では多く信じられている国でもあります。
こうした状況に対し、ラオスを含む多くの開発途上国では、水道開発には多大な設備投資が必要であり、人材開発も必要不可欠で、その普及には超長期の時間がかかるところから、最小限の投資でかつ短期間で多く設置できる、公共水栓方式で安全な水を供給する手段を取りました。ラオスでは現在、水道未普及の地域の80%に公共水栓が設置されたといわれています。しかし、公共水栓は設置時には、安全な水だと確認はするものの、その後の水質管理も塩素消毒も行われていません。水源には家畜等もいます。そして、洗濯も水浴びも公衆の面前で行うことになります。家まで水を持っていくことはできますが、重労働かつ1日に何回も運ばなければなりません。乾季には水枯れを起こす公共水栓も多くあります。
こうしたラオスの人たちの水と生活を、実際に目のあたりにしたとき、かつ自分もその中に身を投じた時、水道の原点をいやでも実感をしました。水道の使命は何なのか?なぜ水道なのか?と…
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