トップページ ≫ 社会 ≫ 特別企画 ~水のスペシャリスト下村政裕からのメッセージ~⑯
社会
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水道の原点(the Origin of Water Supply)
~水道の役割、果たしてきた役割~
水道の原点は、水道法の第一条(この法律の目的)から読み取れます。
「この法律は、水道の布設及び管理を適正かつ合理的にならしめるとともに、水道を計画的に整備し、及び水道事業を保護育成することによって、清浄にして豊富低廉な水の供給を図り、もって公衆衛生の向上と生活環境の改善とに寄与することを目的とする。」
私が水道界に入ったのが、1976年のこと。日本の水道の普及率、そして当時の埼玉県南水道企業団の給水区域であった浦和市、大宮市、与野市の全体の普及率も、すでに90%弱までに達し、水道はもはや当たり前になりつつあった時代でした。なので、水道が公衆衛生の向上と生活環境の改善に寄与しているという意識は、それほど強く感じていなかったと記憶しています。当時ですらそのような状況ですから、今はもはや水道がそのような目的で存在すると意識している人は、水道関係者を除けばかなり少ないのではないでしょうか?
ラオスでは、いわゆる水道の普及率は僅か20%前後。前回にお話をした通り、残りの80%のうちその8割は公共水栓が整備され、かつ20リットルのボトル水も広く普及しています。便利ではないにしろ、外見上の彼らの水と生活は、あたかも問題はないのでは…と彼らの明るく楽しく暮らしているさまを見ればそんな風に感じてしまいます。
ところが、例えばユニセフの世界子供白書から5歳未満乳幼児死亡率(年間人口1,000人当たり何人)を見てみると、ラオス64人、ミャンマー51人、カンボジア31人、ベトナム22人、タイ12人、中国10人、日本3人(2016年)となっています。ラオスは、近隣の途上国と比較しても高いことがわかります。もちろん、全ての子供たちが水系伝染病で亡くなっているわけではありませんが、ラオスでは統計上、1~2割程度の子供たちが水系伝染病で亡くなっているという報告があり、決して少ない数字ではないです。
更に日本では、1950年から70年にかけて、水道の普及が進むにつれて、水系伝染病の患者数が減少していることがわかります(「水道普及率と水系伝染病患者数の推移」等でネット検索してみてください)。もちろん、医療の進歩や衛生観念の向上が大きく寄与したということでしょうが、患者数の減少のみならず医療の進歩や衛生観念の向上に対しても、水道が大きな役割を務めたことも間違いないことだと思っています。
結論として、ラオスでの数々の経験と関連指標の動向等から、自然界にある湧水や川の水、井戸水はもちろんのこと、公共水栓でも、人が真に生きていくために必要な水は、暮らしていくための水は、得ることはできない。だからこそ水道は、安全で、安心をして飲める、使える「命の水」を、使いたいだけ使いたい場所で使いたいときに人々にリーズナブルに供給できる唯一のツールなんだと…まさに水道の原点、役割はここにあるんだと確信をしています。
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