文芸広場
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トランペットは少年のものだ
私だけの確信だ
あの透明で澄みわたった音色
少年Yはいつも寂しかった
父もなく、母もなく
親類の家で育てられた
少年のなぐさめは猫だった
そしてトランペット
猫だけが少年Yを理解している
Yはそう思っていた
猫とたわむれると
きまってYはトランペットを遠く秩父の山並みに向かって吹いた
悲しみにあふれた音色だった
ある日、新聞にYが載った
もうしばらく会っていなかった
少年Yは青年になっていた
記事はYが遭難したと伝えた
Yはなぜ一人で登山をしたのか
Yはトランペットを抱きしめたまま旅立った
遺書も何もなかった
冬になるといつも秩父からトランペットの悲しい音色が私だけには聞こえてくる
つくば林太郎
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