トップページ ≫ 外交評論家 加瀬英明 論集 ≫ ソロモン王は、なぜ贅沢三昧だったのか
外交評論家 加瀬英明 論集
神道の宇宙観は、ユダヤ・キリスト・イスラム教よりも、自然に近い。
新嘗祭や、ご神体の御動座をはじめとして、神道の重要な祭は、夜の帷が降りてから、灯火のほの明りか、神官が揚げる松明の光のなかで催される。果てしない宇宙が、神秘的な暗闇にとざされていることを、直感的に、知っていたのではないか。
それに対して、キリスト教の宇宙観は、人間を中心としている。聖書は天動説をとっている。不動の地球を軸として、宇宙が地球のまわりを、回っていると考えるのだ。
ガリレオ・ガリレイ(1564~1642年)が、地動説を唱えたために、迫害されたことは、よく知られている。私は学生時代に聖書を読みながら、ガリレオ・ガリレイの話が頭をかすめて、キリスト教は人が中心になっていて、宇宙の宗教ではないと、思った。
聖書の「創世記」では、神が人のために、この宇宙をつくった。
聖書は「初めに、神は天地を創造された。地は混沌であって、闇が深淵の面にあり、神の霊が水の上を動いていた。神が言われた。『光あれ。』こうして、光があった」(「創世記」1-1~3)と、始まっている。
自然観も、宇宙観も、人を中心としている。
私は、聖書のなかで、ソロモン王が主なる神のために、壮麗な神殿を建てたうえに、自分のためにやはり豪華をきわめた宮殿を造ったことを読んで、何と品性を欠いている人々なのだろうか、と思った。
私は日本が先の大戦に敗れた時に、小学3年生だったが、日本の美しさは生活が質実で簡素なことにあると、教えられて育った。
「ソロモン王は延金の大盾200を作った。大盾の1つきにつき用いた金は600シェケルであった。延金の小盾も300作った。小盾1つにつき用いた金は3マネであった。王はこれらの盾を『レバノンの森の家』に置いた」(「列王記上」10-16、17)
「レバノンの森の家」は、ソロモン王が自分のために、造営した宮殿である。
「王は更に象牙の大きな大座を作り、これを精錬した金で覆った」(同10-18)
「ソロモン王の杯はすべて金、『レバノンの森の家』の器もすべて純金で出来ていた。銀製のものはなかった」同10-12)
ここでは、ソロモン王の栄華についての記述の一部だけを引用するのに、とどめよう。
聖書はソロモン王の宮殿が、いかに贅を尽くしたものか、誇らしげに描いている。
私は中国の明・清の時代の歴代の皇帝が住んだ宮殿である北京の故宮を訪れた時に、見渡すかぎり黄金の瓦の屋根が連なっているのに、息を呑んだ。故宮は、紫禁城とも呼ばれている。
故宮のなかを案内されて、中国王朝の限りない欲望と、蓄財を目の当たりにした。日本と、まったく違った世界があるのだと、思った。
ジョン・レノンはなぜ神道に惹かれたか 8章 神道の宇宙観、キリスト教の宇宙観
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