トップページ ≫ 外交評論家 加瀬英明 論集 ≫ 自制することが日本文化の最大の特徴
外交評論家 加瀬英明 論集
武道は日本にしかない、独特なものだ。
武術は英語ではそのまま、「マーシャル・アーツ」(武技・戦いの技術)と呼ばれる。日本では技に加えて、精神性が重視されている。
武道は、柔道、剣道、居合道、空手道、合気道、弓道、杖道、銃剣道というように挙げていっても、すべて礼に始まって、礼に終わる。精神の修養であって、気高いものである。
相撲も、単なる格闘技や競技ではなく、神々に奉納する神事であって、敬虔なものである。国技と呼ぶのに、ふさわしい。
私は空手道にかかわってきたが、友人や知人に、日本人であれば武道の基本を知ることが大事であって、武道を学ぶことによって、男女ともに、人に対して礼をもって接することができると、勧めてきた。
武道の真髄は、意識して構えることなく、無意識のうちに、正しい所作ができるという優雅さにある。何よりも落着きと、謙虚さが必要だ。
武道では誰が相手であっても、敬意を払わなければならない。相手から、眼をそらしてはならない。
けっして、傲(おご)ってはならない。気ばってもならない。礼は、知を体現するものだ。
武は心と技が合わさって、成り立つ。気を高め、心を磨く。集中力が、大切だ。
立ちかた、重心のとりかた、表情、カのこめかたと抜きかたと、平常心を身につけることができる。
人の動きは、心から発する。したがって、つねに正しい心を、もたなければならない。己に克つことが、要諦だ。
日本はみるべき天然資源を欠いた国であってきた。
日本は幕末に開国を強いられて。明治から和魂洋才を国是として、近代化することに成功した。これは、国民が徳を蓄えてきたためだった。目に見えない徳こそ日本の国富であってきた。
日本の生活文化の基礎は、和装をとっても、立ち居振る舞いをとっても、日本語のきわだった特徴となっている敬語をとっても、自ら抑えて、自制することにある。武道の基本も、同じものだ。
日本女性の和装をとれば、いかに美しい着物を装ったとしても、立ち居振る舞いが端正でなければ、美しくない。凜(りん)としたところがなければならない。
世界の他の民族衣装は、衣装そのものが美しければ映える。
和装では、衣装は美の一部でしかない。主役は着付けに加えて、立ち居振る舞いであって、精神性が強調されている。衣よりも、着る者の心のほうが、大切なのだ。
日本文化のもっとも大きな特徴は、自制することにある。そうすることによって、人々のあいだに、和がもたらされる。
いま、武道が国際化しているのも嬉しい。空手、柔道の国際大会となると、全世界からの選手が集い競う。
外国人も、日本の武道を学ぶうちに、武道がスポーツではなく、精神的な修養であることを知るようになる。華道や、茶道、香道についても、同じようなことがいえるが 日本の心を世界にひろめるのに役立っている。
西洋ではマーシャル・アーツは、スポーツ競技である。
唯一つの例外が、フェンシングだったろう。しかし、50年ほど前までは、ジェントルマンの嗜(たしな)みとされていたものの、今日では、階級意識が薄れるとともに、そのようなことがなくなってしまっている
武道の世界化も、 ジャポニスムの大きな新しい柱の一つとして、数えられる。
日本の優しい精神文化によって、世界を包みたい。 いま、世界は優しい文化を必要としている。
ジョン・レノンはなぜ神道に惹かれたのか 8章 神道の宇宙観、キリスト教の宇宙観
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