文芸広場
俳句・詩・小説・エッセイ等あなたの想いや作品をお寄せください。
目が覚めたら朝だった
昨夜は久しぶりに熟睡した
熟睡した時間は短い
寝てから一時間も経過していない気がする
その間の時間がそっくり抜け落ちている
その間私はどこへ行っていたのだろう
どこかの夢の世界で私は魚だった
樹木の上で暮らしていたこともある
人間になってからは王子だったこともある
乞食だったこともある
そして目が覚める前は兎だった
私は大きな獣に追われていた
思わず大きな崖を飛んだ
途中木の枝にひっかかり
腰を激しく打って落下した
私は天女の手の中にいた
「何もいませんよ。みんな夢の出来事です」
「王子だったこと 乞食だったこと
先ほど私が兎で大きな獣に追われていたのもですか」
「そうです。私が三つ数えるとあなたはすべて忘れます」
「こわいこと嫌なことは忘れたいけど楽しいこともあった。
思い出したくないこともあるけど忘れたくない人もいる
みんな忘れるのは困ります
いろいろな世界を見た証拠に一つくらい何か残してもらえませんか」
「では一つだけですよ」
天女は片目をつぶるとニッコリ笑いました
目が覚めて気づいたのは腰が痛いことです
それは崖から飛んで打った時のものです
みんな夢でした
一つだけホントなのは腰が痛いことです
山上 村人
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