トップページ ≫ コラム ≫ 男の珈琲タイム ≫ 鬼の平蔵を訪ねた
コラム …男の珈琲タイム
池波正太郎が好きで「鬼の平蔵」ツアーに参加した。鬼の平蔵が活躍したのは今の墨田区あたりだ。600mを超す高さのスカイツリーが偉容を誇っているそのあたりだ。池波が好きな理由は第一に何の学歴もないこと。独学の苦労人ということ。吉川英治や松本清張と一緒だ。努力の天才だからだ。したがって作品は味があり、人間の背中も腹も内蔵も深くえぐって書いているところだ。人間を見抜く慧眼の魔術師といって過言でない。「白でなければ黒、その間にあるのは融通である」と書いたが全ての作品にその精神が見抜かれている。鬼と呼ばれた平蔵は一方で盗人達の善なるところも見据えている。惻隠の情なくして人間が務まるかというのだ。さらに今や否定的に使われてしまっている忖度。日本人の察しの心を実にうまく言い表しているところが何とも言えず心をくすぐるのだ。そう思うとスカイツリーは全て人間の喜びも悲しみも孤独もお見通しで黙として建っているのかと胸がジーンとしてくるから不思議だ。隅田川の流れにも永遠を感じ、悟りに似た想いを抱き夕方、帰途についた。
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