トップページ ≫ 社会 ≫ 特別企画 ~水のスペシャリスト下村政裕からのメッセージ~⑲
社会
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国の視点(Country Perspective)
~国による日本の水道事業の現状及び問題分析~
前回、近年の水道事業の経過を、主だった課題とその対応の観点から、かなり私的な見解で整理をしました。今回は、水道事業の監督官庁である国はどのように現状分析をしているのかを見てみます。厚生労働省が2013年にまとめた新水道ビジョンでは、日本の水道の現在の立ち位置や抱えている課題を、以下の3つの観点から水道の現状評価と課題として整理しています。
一つ目は、「水道サービスの持続性は確保されているか?」という観点であり、国民(こくみん)皆(かい)水道(すいどう)をほぼ実現し、市町村経営の原則のもと、国、都道府県、関係団体等の組織横断的な情報共有や、課題等の解決に対する各種連携を実施している。世界に先駆けた技術開発等、水道技術の絶え間ない研鑽・進歩も認められるとしています。一方で、今後の人口減に伴い、料金収入が減少する中で、施設の更新、ダウンサイジングに取り組まなければならない。加えて人員削減や団塊世代という経験豊富で技術力を持った職員の大量退職により、人材が量、質ともに不足、低下していると課題を上げています。
二つ目は、「安全、安心な水の供給は保証されているか?」という観点からで、水道法に基づく水道水質基準が遵守され適切な施設整備と水質管理の実施により、水質の安全性の向上が実現されていると分析しています。しかしながら、水道水源の汚染事故等による断水や給水停止といったリスクが依然として存在し、水源から蛇口までの水質管理能力も未だ充分とはいえない。加えて、受水槽や飲用井戸の衛生的な水の確保にも依然不安があり、屋内の給水装置工事を実施する民間業者の資質の確保も課題であるとまとめられています。
そして最後3つ目は、「危機管理への対応は徹底されているか」といった観点で、東日本大震災における水道関係団体の応援活動の展開等の対応を評価しつつも、水道事業の耐震化、被災時の体制が不充分である。特に緊急時における生活用水確保の在り方、水道事業体職員が減少している状況下で、広域的な水道施設の被災を想定した応援ネットワーク化や住民とのコミュニケーションの推進による被災時の対応力の強化などが今後の大きな課題であるとくくられています。
こうした現状分析、問題分析により、水道ビジョンでは、行政、事業体のみならず、民間事業者や大学研究機関そして住民の役割分担を明示し、それぞれが、重点的に取組むべき方策を、具体的に例を挙げて示しています。各都道府県の水道事業体では、この国の水道ビジョンを受けて、地方水道行政とも連携をしながら、長期水道事業計画(地方水道ビジョン)の策定とその実現のための中期財政計画を組み立て、日々、長期及び中期の目標に向けた事業を推進しているところです。昨年、2018年末に成立をした改正水道法も、これらの流れを加速化し、良質な水道事業の再構築を、令和の早期に成し遂げることを目的とした議論から産み出されたものであり、私も、その活用と成果発現に向けたお手伝いを、微力ながら、実施していこうと今後の活動計画を練っているところです。
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