トップページ ≫ 外交評論家 加瀬英明 論集 ≫ 樋口一葉が描いた明治の日本人 その2
外交評論家 加瀬英明 論集
一葉の作品は、明治前半の時代の人々がどのように生きたのか、庶民の生活を生き生きとした筆致で描いている。
幕末に開国してから、文明開化の容赦ない高波が、日本社会を洗っていた。まだ、多分に徳川時代の生きかたが、人々の物的、精神的な生活を律していた。
なつの父は、農家の出身だったのにもかかわらず、古典を好んだ。いったい、今日の日本で、幼い娘に古典を教える父親がいるだろうか。
娘が小学四年を終える前から、父から古典を学び、十七歳の少女が一家の生計を支えるようなことが、考えられるだろうか。
かつては、家族のために自分を犠牲にするのは、当然のことだった。
人々は隣人どうしであれどうであれ、助け合った。明治の日本は貧しかったが、人情が豊かな、精神性が高い社会を形成していた。
今日の日本では、物質的な豊かさが満ちあふれているので、人々がかえって貪欲になっている。そのために、共同体であるべき社会が、壊れつつある。
人々が自分しか顧みず、つまらない欲得によって、休みなく駆りたてられているために、苛立ちやすい。
若者までが若々しさを失って、心が疲れて、安易な癒しを求めている。
このところ、日本では高速道路がひろがるごとに、人の心が狭くなってきた。
スーパーや、レストランが立派になるのにつれて、家庭の食事が貧しくなった。
機能的なマンションがつぎつぎと建てられるようになったのに、隣人への親近感や、責任感がなくなった。
欲しいものが何でも手に入るようになったのに、希望だけがなくなってしまった。
豊かな社会が到来したとうのに、希望がないのは、おぞましい。
ジョン・レノンはなぜ神道に惹かれたか 9章 失われた日本人の面影
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