社会
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株式投資などのために企業業績を注視している人は先刻ご承知のはずだが、企業の税引き前利益である経常利益と税引後の純利益との比率が、ある時期から大きく変化した。個々の企業の事情により差はあるものの、かつては経常利益の半分くらいが純利益だったのが、今では7割ほどに上昇している。企業減税のお陰だ。
日本の株式市場を見れば、売買高の過半を占める外人投資家や国内個人投資家は買いよりも売りのほうが多い売り越し姿勢を続けている。その中で買い越しているのは年金資金、ETF(上場投資信託)買いの日本銀行と並んで国内事業法人が挙げられ、その中身は上場企業自身による自社株買いと言える。
自分の会社の株を買い込み、その分を消却すれば、発行株数が減り、1株当たりの利益が上昇することになる。市場は歓迎し、株価も上昇する。その自社株買いのための資金は会社が蓄えた利益金。企業減税もあって資金は潤沢だ。
だが、企業減税の狙いは財務体質の強化とか、設備投資等の企業活動を促すことだったはず。財政危機が叫ばれ、国民に不人気の消費税引き上げが進む中での企業減税には釈然としないものを感じてはいたが、日本の税制への不信感は自社株買いの隆盛で一気に高まった。
そんな折に、1989年度と2016年度の国税収入の一覧表を掲げ、法人税が減った分以上を消費税増加で補っていることを指弾した本の新聞広告を見つけた。詩想社新書『25%の人が政治を私物化する国』(植草一秀・著)で、参議院選挙直前に出た広告は、どの政党の選挙公報文よりインパクトがあった。「消費税ゼロ」「最低賃金1500円」を訴えている点では、ブームを巻き起こしたれいわ新選組の主張に近い。
著者の植草氏は13年前に私鉄電車内での痴漢容疑で逮捕され、無実を主張して最高裁にまで持ち込んだが実刑を言い渡された。野村総合研究所の主席エコノミストや早稲田大学大学院教授を歴任し、日本経済新聞のアナリストランキングで1位になったり、著書が石橋湛山賞を受賞した植草氏が時の政権に対して批判的だったことから、国策捜査による罪の捏造だとの疑いは今も消えない。
テレビや新聞に登場することはなくなったが、著作活動は続けており、その鋭くてわかりやすい指摘で、消費税をはじめ日本経済の諸問題に切り込み続けてほしい。
山田 洋
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