社会
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私の祖母は明治生まれで、文豪 太宰治と同世代だ。祖母は太宰治よりも一つ歳上なので今も生きていたならば111歳であろう。
祖母と私は留守番仲間であり、時に「5W1H(ごダブリューいちエイチ)」というカードゲームを楽しんで過ごした。「5W1H」では5つの「W」=「When / Where / Who / What / Why」に1つの「H」=「How」を組み合わせる。
「いつ(When) / どこで (Where) / だれが(Who) / 何を(What) / なぜ(Why) / どうした(How)」と、文章を5プラス1、合計6つに区切り、各シチュエーションごとに浮かんだ言葉をカードに書き込んでゆく。ゲームの場合は特に順番は気にしなくても良い。例えば「(いつ) 昭和の秋 / (どこで)自宅で / (だれが)祖母と私が / (何を)カードゲームを / (なぜ)留守番のため / (どうした)作成して楽しんだ」といった調子で文章を作る。お互いのカードをアットランダムに拾い合い、声に出して読み上げながら1つの文を作るので、ふだん自分1人では作れないような言葉合わせの化学反応を立体的に体験することができた。
ある時、私が書いた1枚のカードを見た祖母に「こんな言葉!どこでおぼえたのよ!」ときつく叱られてしまった。その日私は「どうした(How)」のカードに「心中をした」と記入していたのだ。おぼえたての言葉をつかってみたかった記憶はある。しかしゲームとは言え「心中」というフレーズは子供から出る言葉としては問題があったようで気まずかった。その後、祖母とこのカードゲームはしなくなってしまった。
『翔んで埼玉』でも注目されている二階堂ふみさんは、只今上映中の『人間失格 太宰治と3人の女たち』でも大活躍。文豪太宰治の最後の女性、富栄役に抜擢され、更なる魅力を発揮されている。言うまでもないが、富栄は太宰治と心中した相手としても知られる女性だ。
ロケ地のひとつに日高市の巾着田がある。秋の巾着田は真っ赤な曼珠沙華の群生で有名だが、この赤すぎるほどに赤い花畑のシーンは誰の目にも大きなインパクトを与えることは間違いない。
巾着田は高麗川のほとりに位置し、昔も今も優しく穏やかなせせらぎを感じられる憩いの場だ。子供の頃の遠足コースでもある高麗川のほとりに立ち寄ってみたところ、予期せぬ幸運であろうか、オスのクワガタムシに出会えた。なかなか元気にしていて嬉しかった。また、赤く染まり始めた曼珠沙華の傍らには美しいメス猫の佇む姿もあり、どうやら近くに住んでいる様子であった。クワガタムシも猫も妙に懐かしく感じられた。この光景を久しぶりに「5W1H」のようにあらわしてみると「令和の秋 / 巾着田のほとりで / 太宰治と富栄が / 生まれ変わったことを告げるため / クワガタムシと猫の姿になって / 曼珠沙華に抱かれにきていた」となりそうだ。
葉桜 こい
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