社会
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10月だというのに、夏はまだ図々しく居残っていた。そして、何の予告もなく突然に夏は去った。
私は上着をまとって大宮の焼鳥屋で焼酎のお湯割りを拝むようにすすっていた。私の隣には人品卑しからぬ老夫人が日本酒をうまそうに飲んでいた。2合瓶はあっという間になくなった。次はウーロンハイを2杯。そして生酒を一合たいらげた。「私はいま独りなの。息子がいたんだけど、ある日家に帰ったら倒れて息絶えていたの。56歳でね。それまで何の病気もしなかったのに。」さらに私に話しかけてきた。「私は公務員だったの。主人にも先立たれてね。こうやって私は毎日、この焼鳥屋に飲みにくるの。私はもう86歳なの」「え!」と私。どうみても60歳代に見えたからだ。テレビはラグビーを映し出していた。「私、スポーツ大好き!」夫人に青春がよみがえったようだった。別れを告げて会計。「オーナーは元気?」「いや、今日亡くなりました。76歳だった。酒蔵「力」のオーナーは無借金経営で、焼鳥界を席巻していた。新鮮なナマモノ、魚介類等、創作料理を真っ先に取り入れた。レッズファンを大量につくった。帰りがけに往年の名スター金田正一氏の死をテレビが伝えてきた。86歳だった。私は勝手に2軒目の酒場でお清めをした。私の脳裡にフランスの画家ゴーギャンの言葉がつぶやいてきた。「我々はどこからきたのか。我々は何者なのか。我々はどこへいくのか」
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