社会
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キリストは、岩の上に家を建てる人を賢者と評した。土台のしっかりとした岩の上であれば、雨が降り河川があふれ、風が吹いても基本的には倒れないからだ。
私が子供の頃に住んでいた家は、賢者さながらの先祖の知恵により、災害に強いとされる岩の上に建てられたものだった。
しかし「自分の家ばかりが無事で良いのだろうか?」と、安全を独占してしまったような 居心地のわるさを持ち続けていたのも事実だ。とは言え、丈夫な岩の土台の上に建てられた家で無事に暮らせたことには大変感謝をしている。
この度、特定非常災害に指定されたばかりの台風19号は未だに予断を許さない状況が続いている。馴染み深き河川の数々は、ことごとく氾濫した。頼るべき堤防たちも寄る辺を失い決壊。そして流されていく家々。
今回の災害が、今から45年前の1974年に起きた多摩川水害(狛江水害)の記憶と重なった方も多いはずだ。多摩川水害を扱ったテレビドラマ『岸辺のアルバム』の濁流シーンは、実際のニュース映像が使用されており話題になった。確かに今回の台風19号による水害とも重なる。『岸辺のアルバム』は、それぞれの事情を抱え散り散りになっていた一家が水害を機に集結。避難命令の出る中、自分たち家族の思い出の詰まったアルバムを取り戻すドラマだった。
かつて暮らしていた岩の上の家は既に人手に渡って久しいが、幸いまだ現存している。
今、この地を心新たに想うことにより、えも言われぬ力がふつふつと湧いて来るのを感じる。激しい雨が降れば降るほど、厳しい風が吹けば吹くほどに、散り散りだった思い出の欠片たちが、困難に負けじと次々と結束し合う。やはり先祖の恩恵を受けて暮らせた場所は、精神的なアルバムの揺るぎない土台なのだろう。
葉桜 こい
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