社会
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今から30年程前のこと。ある魅力的な書に導かれて映画を観に行ったことがある。角川春樹監督の『天と地と』である。この映画タイトルの書を手がけられたのは、墨の魔術師こと書道家の金田石城先生だ。
先月は大宮タカシマヤで「金田石城が描く渋沢栄一名言展」が開催された。金田石城先生の墨の流れには、奥深き人心の機微が感じられた。また、先生ご自身の大変魅力的なお人柄にも触れさせていただき感慨深かった。
今回の名言展で特に気になった渋沢栄一の言葉は「国家に取っての地方は 真に元気の根源 富裕の源泉である」だった。
渋沢栄一に縁がある数字は「11」。天保11年に生まれ命日は11月の11日なのだ。祥月を迎えた深谷市では渋沢栄一記念月間に突入している。
風も一段と冷たくなる季節だ。11月に合うような温かきものを求めてみたところ、やはり鍋料理が恋しくなった。そして渋沢栄一も食べたという、深谷ネギを中心に根菜類をふんだんに使った、醤油ベースの「深谷煮ぼうとう(武州煮ぼうとう)」が良いことに気づいた。実際に作り食べてみたが、この料理は大成功だった。郷土料理は本当に元気の源だと痛感した。
昔の日本銀行券の肖像は、髭のある人物が優先的に選ばれてきた歴史があった。どうやら偽造を防ぐためらしい。髭をたくわえていなかった渋沢栄一は、髭のない分だけ長い間不利だったという説もある。
男性の髭は、権威の象徴や自己主張とも言われる。つけ髭を常備していた偉人もいたほどだ。
新紙幣一万円札の顔、渋沢栄一の歩んできた道は、髭をあらわにして自分を誇示する姿勢とは一線を画するものだろう。むしろ、自身の髭を剃り落としながらでも志を磨いていく、内面的な日々の向上心の積み重ねを強く感じる。
金田石城先生の書を拝見させていただく度に「書を聴く」という心地になる。金田先生は今回の名言展において、渋沢栄一の声の伝道師でもあった。
書によって、渋沢栄一が掲げてきた高き志の旗を「今こそ」とはためかせ、世の中のあり方や人としての大事なものを次々と呼び覚ましてゆく。そこには伝承を後押しする大きな力が働いている。この度の、書と言葉のコラボレーションでは、たくさんの渋沢栄一の声が、時を越え、今を生きる人々を懸命に励まし続けていた。
葉桜 こい
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