社会
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先日、長年多くの大手スーパー店頭に立ち、販売員をしているベテラン女性の方に話を伺う機会があった。以前試食には、買うか・買わないか迷っている客の判断の手助けの為という共通認識が店舗・客双方に最低限は成立していると感じていたが、もはやそのようなものはとうになくなってしまったと語っていた。試食なのだからといっぺんに何切れも、何度も、購買力を持たない子供だけで食べるなどそんな状況が当たり前となっており、対応に苦慮する場面も多いとのことだった。特に肉類の試食でその傾向は如実に表れるという。これは決してモラル低下の話ではなく、相対的貧困の問題と無関係には思えない。
日本は特に女性で顕著だが、一人親世帯での『相対的貧困率』がきわめて高い。国際比較可能な経済協力開発機構(OECD)の2014年版「世界の一人親家庭の相対的貧困率」ランキングでは貧困率50.8%と先進主要国の中でワーストと不名誉な位置にある。
*相対的貧困率とは
社会の通常の生活レベルと比較して大きく下回っている事を相対的貧困と呼ぶ。上記の貧困率50.8%とは二人に一人が2014年の貧困線(所得122万円)を下回っているという意味。
戦後日本経済の復興を下支えした終身雇用、年功序列型の賃金体系。経済成長率右肩上がりの時代にはこうした真面目に働けば、安心して将来の生活を組み立てる事が出来る。少なくともそう信じる事が出来た時代にはまさにうってつけの仕組みであった。正社員として旦那が働き、子供の教育費等で足らずがあれば奥さんがパートで補う。一億総中流と称された、当時は決してもろ手をあげてよいニュアンスで使われた言葉ではなかったと記憶するが今から振り返ると、皆が実感としてそう感じる事の出来た素晴らしい時代であったともいえる。
しかしこの成功が生み出したもうひとつの遺産、正社員の給与がきわめて高い、いわゆる正規・非正規雇用という日本特有のシステムが社会構造の変化と共に現代の相対的貧困問題に大きな影響を与えてしまっている。
概算だが日本の賃金構造(時間当たり賃金)の割合は以下のようになる。
時間当たり賃金割合
男性(正社員) |
女性(正社員) | 男性(非正規社員) | 女性(非正規社員) |
10 | 8 |
6 |
4 |
比して欧米諸国では同一賃金同一雇用が長年定着しており、このシステムでは
時間当たり賃金格差はないことになる。すなわち日本のように同じ労働をしていながら
正規・非正規の雇用の違いで収入が異なることはない。
その違いは労働時間の長さのみに依拠していることになる。
日本でもこうした構造を改善する目的で
来年2020年4月1日に「同一労働同一賃金」法の施行が控えている。
親世代のこうした構造的収入格差が次世代の、特に教育面に与える影響の改善については
喫緊に取り組まなければならない重要な課題である。また生きる事に汲々としている状態が日常となれば
親子のコミュニケーションも質・量ともに絶対的に不足することは避けられず、こども世代が社会と
様々に関わる機会・またその意欲をも奪い取ってしまうことになりかねない。
同法が実際に普及していくには社会制度の変革等まだまだ時間がかかり、かつ多くの紆余曲折も予想される。
両輪の一方として公的支援拡充についても合わせて検討していかなければならない。
教育の話は今日・明日のスパンではなく、長い射程で取り組むべき話であり
また直截にいえば語られることは多いものの、成果が見えにくいテーマでもある。
未来の世代に向けた政治課題は何も環境問題だけではない。
こうした国家百年の計を見据えた息の長いテーマに
真摯に取り組んでこそ民主政治の価値ここにありといえるのではないか。
小松 隆
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