トップページ ≫ 外交評論家 加瀬英明 論集 ≫ 内的な覚醒がエネルギーを生む
外交評論家 加瀬英明 論集
自分のなかに沈潜する時代でもある。それとともに神秘主義が力を持つようになる。全宇宙が大宇宙であるのならば、個人は完全な小宇宙であるといえる。そこで自己の小宇宙を探求し、説明しようとすることがいっそう行われるようになる。その結果、神秘的なものへの憧れが強まることになる。アメリカでは、神秘主義や宗教に対する関心が強まっている。科学技術の発達によって豊かさが飛躍的に増大すると、人々の関心が最後には自分に向けられるようになるのだろう。日本でも若者のあいだで同じようなことがみられる。
〝ミーイズム〟は開放的なものと、閉鎖的なものとに分けることができるようである。アメリカでは若者のあいだで、マリファナや、LSDのような幻覚剤が流行しているが、これは閉鎖的であるとともに、逃避的なものである。あるいは他人に対する関心を欠いた、利己的な生活となってあらわれるとすれば、やはり閉鎖的なものである。
たしかにアメリカでは〝ミーイズム〟とか、〝ミー・ジェネレーション〟(me generation)というと、排他的で、利己的な響きが強い。
しかしもう一方では自己開発を通じて、自分を自由にすることによって、社会や、周囲の人々と協調性を高めようとする人々も多い。自分の精神面を知ろうとすることは、内省的なことである。そして自分を通して人間を知ろうとすることによって、他人に対して思い遣りや、やさしさをもって接するようになるのだ。
カーター大統領も、この一人である。政治家としてのジミー・カーターは、素人であるとか、無知だといった批判を受けているが、精神的な挫折を一度体験したことを、自ら書いている。自伝である『なぜベストを尽さないのか』のなかでは、読む者によっては神秘的に受け取られる体験が述べられている。自らの魂をさぐることによって、自分を制約していたさまざまなタブーから解放されて、新しい人間として生まれ変わったというのだ。
最近、カール・グスタフ・ユングは、日本の若者のあいだでも人気があるが、彼は人間の自我を分析して、ふつう人間は対社会的な自分のみを意識して生活しているが、それ以外に無意識の意識があって、さまざまなものが入り混じっているという。そこで無意識の領域まで合わせた、全体性を開花させなければならないと説いている。
カーター大統領の場合も、今日の多くのアメリカ人の共感を呼ぶような体験をしている。私は妹のルース・カーター・ステイブルトン夫人と親しくしているが、兄のジミーについてかなり詳しくきいたことがあった。ルースたちは自己の内的探求にあたって、無意識のなかにある幼児体験からくるタブーを取り除くことを重視している。個人は一つの完全な小宇宙であるから、自分のなかにすべての解答が入っているというのだ。そしてタブーや偏見を乗り越えて、解放された時に、自分のなかからエネルギーを引き出すことができるというのである。
「兄は生まれ変わって(州知事選挙に失敗し、挫折した時に、ジョージア州ブレインズの自宅の裏の林を、妹と二人で歩いている間に目覚めたという)から、効率のよい人間になりました。それまではエンジンが不調だったのが、快調になったのです」
と、ルースがいったことがあるが、今日では多くのアメリカ人がこのような内的な覚醒を求めている。
個性の時代 ミーイズムのすすめ 一章「ミーイズム」のすすめ
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