トップページ ≫ 外交評論家 加瀬英明 論集 ≫ 社会奉仕活動は「人間尊重」
外交評論家 加瀬英明 論集
産業構造の変化も、また人間中心の時代をつくりだしつつある。農耕社会においては人間はまず自然を相手に、そしてその次に現れた工業社会では人間が自然を模倣して造った機械を相手にして生活を営まなければならなかった。しかし今日、アメリカ、日本、西ヨーロッパといった先進工業国においては、直接生産に携わる人々よりも、知的、あるいはサービス部門で働く人々のほうが多くなっている。ということは、人間が人間を相手にする仕事のほうが増えている。そこで人間に対する関心がたかまるとともに、人間をより理解しようとするようになった。
このように自己を開放するような〝ミーイズム〟は、もう一方では人間を尊重しようとする、ヒューマニスティックな精神を生みだしている。自分が世界の主人公であるとともに、周囲の人々もそうであるという意識が強まっている。優しさや、思い遣りが多くの人々によって大切にされるようになる。
アメリカでは開拓時代から、助け合いの伝統があった。それにユダヤ、キリスト教のなかには、日本ではみられないような強い慈善の精神が根を張っている。日本では公益のための奉仕活動や、慈善といえば、一般の人々にとってはほとんど無縁なものである。アメリカの連邦統計局の数字を見ると、社会奉仕活動に従事している人々の数は、昨年は三千七百万人に達した。日本では社会奉仕活動というと、ごく一部の市民しか携らないものであって、余暇に無給でこのような仕事をしている人があると、「奇特な人だ」といわれて珍しがられるが、アメリカではこれまでも奉仕活動がかなり一般化していたというものの、このところ参加する人々の数は急速に増えている。
もう一方では自分に馴染まないような職場をすぐに辞めてゆく風潮が一般化し、労働者がすぐに休みを取ってしまうというのに、プールのライフガード、公共病院の掃除人、託児所の係員、観光地の清掃といった、ありとあらゆるさまざまな公共的な仕事が一般市民の無給のボランティアによって行われている。先日、私はロサンゼルスを訪れた時に博物館にいったが、見学にきた小学生のグループを案内していたガイドは近所のパート・タイムのボランティアの主婦であった。
また連邦統計局の数字を使えば、一九六五年には十三歳以上の国民で、奉仕活動に何らかの形で参加した者は全体の十八%であったのが、七八年には二十四%に増えている。そして今後も増え続けようとみられている。
個性の時代 ミーイズムのすすめ 一章「ミーイズム」のすすめ
バックナンバー
新着ニュース
- エルメスの跡地はグッチ(2024年11月20日)
- 第31回さいたま太鼓エキスパート2024(2024年11月03日)
- 突然の閉店に驚きの声 スイートバジル(2024年11月19日)
- すぐに遂落した玉木さんの質(2024年11月14日)
特別企画PR