社会
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今夏に開催されるはずだった東京五輪は、新型コロナウイルスの感染拡大により延期となったが、今後、日本で予定されている国際的ビッグイベントはもう1つある。5年後の大阪万国博覧会で、こちらも関連する動きが出始めている。
3月19日には文化審議会が、50年前の最初の大阪万博のシンボル「太陽の塔」(岡本太郎・作)を国の登録有形文化財にするよう答申した。この塔には、未来、現在、過去を象徴する「顔」が表現され、当時、人々の意表をつく斬新なデザインだった。
今年に入り、大阪万博50周年がらみの催しが大阪や東京でいくつも開かれている。日本橋高島屋本館の4階にある資料館では1月から「大阪万博ガイドスコープ――アストラマを覗く」という企画展が催されている(4月19日まで)。
旧三和銀行の取引企業が中心になったグループが出展したみどり館には高島屋を含む32社が参加し、大阪万博でも屈指の人気パビリオンだった。五角錐形のユニット5個で組み立てられたドーム建築の天井画面は2000㎡もあり、5台のカメラで撮影した5本のフィルムを映写機5台で同時に映写する仕組みの全天周映画が呼び物だった。スピーカーも515個設置された。
映像は、「誕生」と「前進」の2部構成で、脚本は谷川俊太郎、音楽は黛敏郎。「誕生」は宇宙の創生から人間の未来までを描いた壮大なドラマだ。プロローグに続き、白い布を腰にまとっただけの原始人が登場するが、演じているのは暗黒舞踏の創始者、土方巽(ひじかたたつみ)だった。北海道の硫黄山で撮影され、噴煙の中で土方は躍動する。観客たちは度肝を抜かれたはずだ。そして、異端視さえされた彼の鬼気迫る舞踏を大企業グループが受け入れたのも驚きだった。
美術評論家の椹木野衣(さわらぎのい)氏は’70大阪万博は「近年、国内外で調査や研究が進み、長い万博史上でも類まれな実験芸術の祭典であったことの詳細がわかってきた」と評価する。みどり館以外についても言える。日本鉄鋼連盟による鉄鋼館では、日本の現代音楽に新境地を開いた作曲家、武満徹を音楽監督にして立体音響劇場「スペースシアター」が展開された。12チャンネルのテープ再生装置と天井、床、壁の1008個のスピーカーで武満の前衛音楽を提供した。
私も仕事仲間と万博会場に行ったが、人込みに圧倒された。人気のみどり館や鉄鋼館に入館した記憶もない。みどり館では連日2~3時間待ちだったというから、門前払いみたいなものか。
(写真説明)日本橋高島屋の本館(右)と新館
山田 洋
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