トップページ ≫ 社会 ≫ こんな時だからこそ考えてみたい水道水の役割 ➁
社会
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1960年代から70年代にかけての高度経済成長時代には、水道の普及も日本の各地で進み、水道普及率が85%を超えた1975年代後半には、水系伝染病の罹患者は、限りなくゼロに抑え込むことができた。もちろん、医療技術の進歩や国民の衛生観念の向上が直接の原因であるといえるが、国民の衛生観念の向上には、物理的にも、精神的にも、水道が大きな役割を果たしたことは間違いない。
温故知新。3つの密の一つ一つを完全に避け、水道水を使って手及び顔を洗い、うがいを頻繁にすることによって、新型コロナウイルスを完全に封じ込めることができることを、過去が現在の我々に語りかけている。
ところで、江戸の水道では、なせ、水系伝染病には対抗できなかったのだろうか? 江戸の水道と近代水道の違いが、すなわち、コロナにも対抗でき得る近代水道の定義といえ、3つのことで説明できる。それは、①飲める水に処理をすること ②管を使うこと ③有圧で蛇口まで送ることである。
江戸の水道は、井の頭池からの神田上水や多摩川の羽村で取水していた玉川上水によって、江戸の町まで原水のまま運ばれ、江戸の町中の地下には、木製や竹製でできた樋(ひ;とい)で整備された水道網が通っていて、それが各お屋敷や、長屋の敷地の地下に埋められた大きな桶と繋がっていた。つまり、武家や町方の人たちは、この桶から、大腸菌等により汚染される機会が非常に高い未処理の原水を汲んで使っていたのである。余談であるが、江戸の町の井戸端会議に出てくる井戸は、本来の浅井戸ではなく、この水道だったのだ。
病原菌等が簡単に混入してしまう江戸の水道に対して、横浜で産声を上げた近代水道は、浄水場で飲める水に処理をしかつ塩素で消毒を行い、パイプを使って有圧で蛇口まで届けることによって、水道管の中に汚染されている地下水等が入ってこないように工夫をして、浄水場で作られた安全な飲料水をそのまま蛇口まで配っているのである。このことによって、都道府県民の公衆衛生の向上と快適な水と生活を確保しているのが現代の水道である。
温故知新。今風に言えば、過去から学ぶことによって、現在を正確に理解することができ、そして現在を知ることによって、初めて将来を語れるということであろう。水道の歩んできた道から現在の水道を見直し、3密を避けるとともに大いに水道を活用して、早く、通常のあたりまえの暮らしを取り戻そう。
新型コロナウイルスの終息を待って、ぜひ、東京都水道歴史館(御茶ノ水駅最寄)へ、ご家族で出かけてみることも、心からお勧めする。江戸の水道や近代水道の歩みを知ることによって、我々の子供たち、孫たちが過ごす次世代、次々世代に向けて、今は何をすべきなのか、大いに思いを馳せる時間が持てることをお約束する。
水上清悟
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