社会
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3月末に株式会社デイズジャパンが東京地方裁判所から破産手続き開始決定をされたとの報道があった。同社が発行していた『DAYS JAPAN』誌をめぐるさまざまな出来事を思い起こすと陰鬱な気分に陥る。
この誌名の月刊誌は1988年3月1日に講談社から創刊された。宣伝費6億円、発行部数35万部でスタートし、世界各地の環境問題、特に原子力発電所の危険性を強く訴えた記事や写真を掲載して注目を集めた。当時、講談社に就職した社員たちの配属希望先のトップが同誌編集部だったという話だ。
しかし、翌年の11月号の特集記事「講演天国ニッポンの大金持ち文化人30人」で、著名人の講演料が高過ぎるとして、その金額を具体的に掲載したら、歌手アグネス・チャンの講演料が間違っていたことが判明。文化人としての仕事で同社と関係のあった彼女は社長に直接訴えたという。クレームは奏効、編集長さらには編集トップの専務まで動いて謝罪したが、それが尋常ではなかった。
翌々月号で大々的にお詫びしただけでなく、この号の新聞広告でも目立つ形でその旨を伝えた。後に『フライデー』や『週刊現代』の編集長になった元木昌彦氏は「私を含めた部外の人間からは(講演料の)金額がやや多かっただけで、なぜここまで謝るのかという声が上がった」と回想しているが、この時期に同社の漫画雑誌編集部にいた私も同感だった。社長もこれほどの謝罪を求めたのではないと、編集サイドの対応に違和感を抱いたようだ。
以後の展開も驚きの連続だった。『DAYS JAPAN』は休刊になり、専務は辞任し、非常勤取締役に。編集長は退社、担当役員も担当替えとなり、数年後に退社した。一連の騒動の裏には社内の権力争いも絡んでいたとの見方も強かった。
それから10年以上たった2004年3月に、かつてこの雑誌で活躍していたジャーナリストで戦場カメラマンの広河隆一氏が中心になり、同じ誌名でフォトナーナリズム雑誌を創刊した。一度消滅した雑誌の理念を引き継ごうという意図には共鳴する人も多かったが、金銭面では苦労したようだ。毎号1億円ほどの広告収入があった旧『DAYS JAPAN』に対して、こちらは広告も発行部数も比較にならなかった。何度も苦境に立たされても15年近く刊行を続け、ついに2019年3月号で休刊すると発表した。
その直後、『週刊文春』が広河氏による複数の女性に対しての性暴力を報じた。土門拳賞をはじめ写真界の数々の賞を受賞した彼のスキャンダルは衝撃的だった。旧『DAYS JAPAN』時代からの紆余曲折は、さながら不条理ドラマを見る思いだ。
山田 洋
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